美しく個性的、レアなアール・デコ調クロノ。VARIO Empire Chronograph提供レビュー


前作1918 Trenchの大ヒットも記憶に新しい人気のシンガポールのマイクロブランドVARIOから、各色50本限定の新作「Empire Chronograph」が登場した。

そう、名前からも分かる通りこれは以前当ブログでレビューしているアール・デコ調の「Empire」のクロノグラフ版だ。だがただのバージョン違いでは終わらない美しさと実用性を兼ね備えている。

今回は同モデルの「ホワイト・タキシード・ゴールド」カラーを提供いただいてのレビューとなる。


もくじ



開封: キャリングケースがパッケージ
ケース: メカクオーツを収めた美しい形
文字盤: 雰囲気変わらず新印象
ストラップ: 安心のVARIOクオリティー
まとめ: 美しく、個性的で、そして稀なクロノ・アール・デコ。


開封: キャリングケースがパッケージ


通常腕時計を購入すると、過剰包装かつ一度きりしか使わない化粧箱の中に時計が入っているものだが、VARIOは違う。VARIOの腕時計は特製のウォッチキャリングケースに入っているのだ。

無駄な梱包を排すとともに、(捨てない限りは場所を取り埃をかぶるだけの存在である化粧箱とは異なり)時計とともにずっと使える実用的なキャリングケースがついているのはお得に感じる。


 ロゴ入りタグだけでなく、ファスナーのスライダー部分にもVのロゴが入っている。


VARIOのケースは以前もデラックスタイプをレビューしているが、ドーナツ状のケースであるためウォッチロールと異なり、メタルブレスの時計もそのまま入れることが出来るので便利だ。

一般的な腕時計のパッケージと異なり、そのままこれをキャリングケースとして使えることは無駄が非常に少ないし、大げさなパッケージがない分送料も環境への負担も軽くなる。デザイナーがブランドオーナーだからこその効率的な考え方と言えるかもしれない。


保証カードはEmpireの文字入りで、かっこいい螺旋階段のイラスト入り。

 

ケース: メカクオーツを収めた美しい形


38mmと小ぶりで品のあるケース。防水性能は5 ATM。

複数層からなる文字盤と、丸みのあるベゼルの織りなすリズムが心地よい形状だ。


ケースは以前当ブログでもレビューしているクロノグラフではないEmpire Art Deco(左)とほぼ同一。もちろん、プッシャーがあるため完全に同一ではない。

ちなみにEmpire Art Decoは自動巻き11モデル、手巻き式8モデル、これら全てが売り切れとなっているVARIOの大人気モデルだ。


こうして両者を比較してみると僅かながら形状が違いがあるようだ。(左が今回レビューのクロノモデル)

竜頭も以前のEmpireと同様にクラシカルなオニオン形。


ケース仕上げはベゼル部は艶出し仕上げ、側面はヘアライン仕上げと使い分けられているのも品がある。


ラグはパススルー式。付属ストラップはクイックリリースがついたものであるが、様々にストラップを付け替えたい人には嬉しい。


プッシャーは直方体形。円柱にプッシャーがついたタイプより安定感があるので個人的にはこの直方体プッシャーの方が好きだ。

ムーブメントはセイコーインストゥルメンツの「メカ・クオーツ」ことVK64。UNDONEなどでもVKシリーズのメカ・クオーツムーブメント(VK61)が使用されているが、一般的なクオーツクロノグラフと異なり、機械式クロノグラフのような針運びとリセット時の挙動が特徴だ。

2時位置のプッシャーで計測開始、同プッシャーで計測を停止しさせ、4時位置のリセットプッシャーを押すと、メカ・クオーツではクロノグラフ針が一瞬で12時位置に戻る。対してメカ・クオーツ以外のクオーツ式クロノグラフだと一瞬では戻らず、「ツツツツツ」とクロノグラフ針が動きながら12時に戻るのだ。

提供いただいた個体のケース裏はなんと非クロノ/自動巻きEmpireのものがついているエラーモデル!これは初期ユニットにしか見られないとてもレアなものだ。


ねじ込み式の自動巻きEmpireモデルの裏蓋がついてしまっているが、このクロノグラフモデルでは裏蓋はスナップバック式。そのため蓋を開けるための取っ掛かりがないうえに、5ATMのため工具無しでは開けれないほどきっちりはまってしまっている。説明無しに時計屋さんにバッテリー交換を頼めば困らせてしまうことだろう。

Image courtesy of Vario

なお、VARIOは、このエラーモデルを入手してしまった方には、数年後に無料でバッテリー交換+正しいカバー(写真上)に付け替えというサービスを提供するとのこと。エラーモデルでもきちんと対応してくれることは嬉しいことだ。


文字盤: 雰囲気変わらず新印象


文字盤で1番目を惹くのは中央部分の細やかなギョーシェと、アール・デコ調の美しいアラビア数字アプライドインデックスだ。Empireとは異なり、より丸みを帯び、艶がある。


クロノではないEmpireも同様に文字盤中心にはギョーシェ模様が存在する。写真ではうまく伝えることができないのが残念だが、どちらのモデルも中心に行けば行くほど細かくなるこの仕上げには、じっと眺めていたくなる要素がある。


しかし文字盤は前モデルの焼き直しというわけではない。文字盤最外周は別レイヤーとなっており、分刻みのインデックスと、さらに細かい刻みが。この部分は最も盛り上がっており、文字盤の立体感に貢献している。


また、クロノモデルは二つのスモールダイヤルが文字盤に配されていることも特徴だ。 右は24時間ダイヤル、左はクロノ分ダイヤルとなっている。スモールダイアルのフォントは、チャプターリングに当たる文字盤最外周に記された分インデックスと同じものに統一されている。


針は以前のEmpireと同形状に見えるが、よく見ると僅かに異なるのがおわかりいただけるだろう。以前のものは細く華奢で全体的に丸みを帯びた印象であったが、クロノモデルでは僅かに太く、平らに、厚みも増し、しっかりした印象に。

なお  風防は安心のサファイアクリスタル製で、内面に反射防止コーティングが施されている。


ストラップ: 安心のVARIOクオリティー


付属の品のあるストラップはブラウンのエプソムレザー「Expresso Brown」。イタリア製の本皮で、もちろんVarioオリジナルのもの。




裏地は染められておらず僅かに起毛しており肌触りが良い。裏面にもバックルにもVatioの刻印。



ストラップのスプリングバーはクイックリリース式となっているため取り外し、付替えも容易だ。


なおこちらの緑のものはEmpire Chronographには付属せず、別途購入する必要があるが、VARIOの新作、植物なめしのイタリアンレザーストラップ。「フォレストグリーン」カラーだ。

この深い緑は文字盤の金色にも合って美しい。先のストラップとは表面のテクスチャーや糸色も異なる。


こちらは裏面もまた表面と同じ緑となっている。それもそのはず、一枚のトップレザーを接合することなく、ストラップ側からぐるり表から裏へと折り曲げているのだ。

こちらも裏面とバックルにVarioの刻印があるが、もう一つの刻印はブラウンのストラップとは異なる。「Vegetable Tanned Italian Leather」、天然(植物)なめしのイタリアンレザーと刻印されている。


まとめ: 美しく、個性的で、そして稀なクロノ・アール・デコ。




アール・デコスタイルで美しくまとめた「Empire」。その雰囲気はそのままに、ムーブメントはクオーツに、クロノグラフ機能も付加した「Empire Chronograph」。

しかし単に「Empireのクロノ版」で終わることなく、艶のあるアール・デコ調インデックス、基本形状は変えずに印象を新たにした針、そして新たにスモールダイヤルが付加されたことにより、アール・デコ調の雰囲気から逸脱することなくEmpireとは異なる個性が生み出されている。

そしてこの雰囲気と美しさを保ちながらこれで4万円という価格(サファイア+反射防止コーティング、キャリングケース付きであることも忘れてはならない)に押さえているのは嬉しいところだ。


無骨なクロノグラフやレトロな見た目のクロノグラフは数あれど、このアール・デコ独特のクラシカルな印象を持つクロノグラフは新鮮だ。

もちろん一部の腕時計ファンの中には自動巻きではないことを惜しむ声もあるだろう。その一方でクオーツ腕時計のファンがいるのも事実だし、実用重視派にもクオーツであることは利点となる。



文字盤のカラーリングは今回レビューしている「ホワイト・タキシード・ゴールド」を含め6種類用意されていたが、すでに「サーモン・タキシード」色は売り切れとなっている。どのカラーも50本づつと数が限られているので、気になる方はお早めにVARIOウェブサイトから購入されるとよいだろう。



Source: Vario

(abcxyz)

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