テクノロジーに置き去りにされた未来の浪漫を感じるニキシー管腕時計「NIXOID NEXT」


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先日の記事「ニキシー管が美しいNIXOIDの最新作、世界初のデュアルコア・ニキシーウォッチがローンチ!」でご紹介したニキシー管腕時計、NIXOID NEXTのプロトタイプを送っていただいたのでレビューしよう。

なおレビューするのは加速度計機能の付いていない「通常版」の初期プロトタイプ版であることにご注意戴きたい。(プロ版では手首を捻るだけで時刻表示が可能となっており、この機能はオン・オフできる。)

この初期プロトタイプと製品版の違いとしては、製品版では:

・ボタンに防塵機能追加
・(オプションでプロ版では)加速度計機能
・ストラップ接続部のスペースが広く
・塗装技術、ミリング技術が僅かに異なる
・レーザー刻印が異なる

とのことなので、基本的にはこのレビューでご覧になるものは通常版のNIXOID NEXTとほぼ変わりないと思って戴いてよいだろう。


もくじ

開封
ケース:巨大だがとても軽量
文字盤:ニキシー管の魅力に溺れる
ストラップ:24mm幅でも付け心地良し+付け替え簡単
まとめ:忘れ去られた近未来浪漫を感じて


開封



おなじみNIXOIDのロゴ入りの外箱。

 

中を開けるとNIXOID NEXTとマグネティックコネクター仕様の充電ケーブル、説明書が出てきた。なおプロ版ではこのほかに加速度計機能のオン・オフを行うための特製キーホルダーも付いてくるはずだ。


そして出てきたこちらがNIXOID NEXT通常版初期プロトタイプだ。


ケース:巨大だがとても軽量


アルミニウムをCNCで削り出したケース。アルミケースの表面には陽極酸化皮膜を施すアルマイト加工がなされている。風防は傷の付きにくいサファイアクリスタル製で安心。

ケース径は54mmもあり、厚みは17.5mmほど。大きなケースではあるが、アルミニウム製であることもあり、ケースだけだと実測僅か55gと一般的な自動巻き腕時計よりも軽い(セイコーSKX009だとストラップ付きで135g)。


こちらがニキシー管を点灯させる/現在時刻表示のためのボタン。とても細かなテクスチャーが施されている。なお、このボタンを長押しすると時刻設定モードに入る。


こちらは反対側。横から見るととてもシンプルに見える筐体。艶消しブラックがストラップにマッチする。


裏蓋はユニークで、なんと六角穴付きボルト4本で止めてある。

裏蓋中央部にはQRコード。その上には「EARLY PROTOTYPE」(初期プロトタイプ)の刻印があり、下にはNIXOIDのロゴ、そして「Kickstarter Special」の文字。このほか「ANODISED ALUMINIUM」(アルマイト加工アルミニウム) 「SAPPHIRE GLASS」(サファイアクリスタル風防) このモデルには機能が無いものの「ACCELEROMETER」(加速度計)、このほか、バッカーナンバーとシリアルナンバー(00001)、バージョン(2.2)も刻印されている。

これらは全てレーザーによる刻印だ(インスタグラムストーリーでご覧になった方もおられるかもしれない)。


NIXOID NEXTは従来のモデルと異なり、専用のマグネティックコネクターを使用して充電するようになっている。

 
こういう風に裏蓋の端子に接続することとなる。磁石によりピタッとはまり、反対向きには引っ付かないようになっている。いちいちmicroUSBの上下を合せてブッ挿さ無くて済むのは楽だ。


文字盤:ニキシー管の魅力に溺れる


ニキシー管を使用した腕時計の実物を持って始めて判ったのは、ニキシー管の魅力だ。

管の中に細い線でそれぞれの数字の形が作られており、それらが重なり合うように配されている。ケース側面のボタンを押すと、高音のハム音を鳴らしながら、現在時刻を表示する前に0から9までの数字が順番に光っていく。それぞれの数字が光る時間はとても短いものの、その瞬間にニキシー管の中に光の数字が上下していくのだ。


なんだか文字で書くと面白みがないが、この光の数字が上下していく光景、そして時間が表示された時の左右のニキシー管の数字の違いによる高低差がなんとも言えない浪漫を感じさせる。

今では奇抜な3Dデバイスでも無い限り、画面に表示される情報は全て平面。スマートウォッチもデジタル時計も平面的すぎる。そんな中で、左右の数字が高低差を持って表示されるこの腕時計は上手く言い表すことのできない魅力を伴って時刻を伝えるのだ。


右側にLEDが3つある。一番上のLED(紫)は充電時に点灯。上から2番目のLED(緑)が光る時には「時」が表示され、3番目(青)が光る時には「分」が表示される。


光量は十分。特に暗い中ではロマンチックだ。用もないのに何度も光らせてしまう。

もちろん日陰の方が見やすいことは事実であるが…

フィンランドの真夏の直射日光を浴びても認識できる。

こういう写真を撮る時にはやはり手首を捻るだけで時刻表示が可能なプロ版の方が便利だろうと思う。


ストラップ:24mm幅でも付け心地良し+付け替え簡単


24mm幅のストラップはフッ素ゴム(Fluorine rubber、FKMとも呼ばれる)でできている。バックルはヘアライン仕上げ。シンプルで、ロゴの類いは無く、質素さをも感じさせる。


付け心地は良く、幅が広いため安定感がある。付け心地の良さには、大きさの割に軽量なケース部も貢献しているだろう。ケースとストラップと合せて重さは僅か99gだ。


ストラップ裏面は魚の骨(蛇の骨?)のような形状の窪みがある。このためストラップが手首に安定しながらも、素材が肌に密着することがなく、付け心地の良さを実現しているのだ。

 
クイックリリースストラップとなっているため簡単にストラップを換えることができるのも嬉しい。

手首径16.5cmの私にはストラップ穴小さい方から2つ目がピッタリだが、汗ばむ時期なので3つ目でも良い感じ。ケースが平たく大きい為もあり、4つ目の穴でもケースが手首をぐるり回ること無く手の甲側に留まってくれる。なので大柄な時計ではあるが、一般的な腕時計(大半の腕時計では私は3つ目の穴がピッタリ)とそう変わらず、手首径が私よりも少々小さい方でも着用に問題は無いだろう。


もちろんクイックリリース式なので簡単に24mmのストラップに付け替えることができる(写真はDWISSのRS-1 Automaticのものと付け替えてみたところ)。


まとめ:忘れ去られた近未来浪漫を感じて


このような存在感とロマンを感じさせる腕時計は他にないだろう。


当然ながら、ボタンを押さないと時刻は表示されない。これはハミルトンのパルサーなど初期のLEDウォッチでもそうだったし、スマートウォッチなどでもディスプレイが非使用時にはオフになるものがある。ボタンを押さないと腕時計としての機能を果たさない、という点においてはNIXOID NEXTもそれらと表面的には同じと言えるかもしれない。

しかし大きく違うのは、電気が通っていなくとも風防の下に見える前世紀のテクノロジーの放つ魅力だ。


技術の進んだ今では無駄に思えるほど場所を取る部品のそれぞれが、そこにあるだけで魅力的なのだ。逆に空間を最小限にして、効率のみを追求した今の技術にはない魅力がここには確かに存在するのだ。

存在感のある大柄な電解コンデンサ、銅色の導線が巻かれたコイル、学校の授業で実験に使ったような2本の足が生えた発光ダイオード、それらを繋ぐ基板。パソコンのマザーボードなどを見てもそこには一つの街が存在しているかのように感じるが、その街を腕に身につけるのである。

そしてここでも一際存在感が大きいのがニキシー管だ。発光している時には見逃しがちなハニカム状のアノード。蜂の巣を思わせるそれは、機械的のようで有機的。そしてガラスの管の立体的な突起と窄まり。左右のニキシー管の僅かなガラスの歪みなど、全く同じものを大量生産する技術のせいで見かけなくなった個性もここにはある。


もちろん時が光るロマンチックさも忘れてはいけない。

ニキシー管が光る時に光っているのはガスだ。よくよく見ると数字の形をしたカソード線そのものが光るのではない。白熱球ではフィラメントが熱くなり白熱化することでフィラメントそのものが光るが、それとは異なり、ニキシー管では数字の形の周囲の空間にあるガスが光っているのだ。

Cathode Corner.comの説明を参考にすると、 正の電圧がアノードに掛かると、カソードの回りのネオンガスに電場が発生し、ネオン原子のエネルギー準位を変化させる。これによりガスが励起状態となりプラズマ化、グロー放電が発生しオレンジ色の光子が出る。


ニキシー管はオレンジ色の光だから「温かみがある」などと言われているかと思っていたが、それに加えて表示される数字自体もガスが光るためくっきりとした境界が判る光ではなく、ふんわりとした光なのだ(ピントが合っていないため光がぼんやりしているわけではない)。

2次元的な数字の表示とは違い、数字の線を全ての方向から包み込むような、立体的な光であることも独特の魅力となっている。オレンジ色の光が、光っていない周囲のカソード線を照らすのも素敵だ。

かつては日本でも製造されていたものの、もうどの国でも製造されていない(正しくは一握りの小規模製造者を除き生産していない)ニキシー管の希少性、使用されているのが旧ソ連製の軍用ニキシー管であることもまた、時代の流れを感じさせると共に、この腕時計の光に浪漫を付加している。


(瞬間的に二つのカソードが光っているところ)

ある意味、この「時代遅れ」なニキシー管の持つ魅力は、技術の進んだ現代だからこそ際立ってきたという言い方もできるだろう。現代の技術が効率性の名の下に置き去りにしてきた空間、優雅さ、色、光、感性。

そんな過ぎ去りし時代に忘れ去られたそれらに憂いを感じ心の中で思い返しながら生きるか、それともそれらを身につけて今に蘇らせるか。NIXOID NEXTはそんなことを考えさせてくれる腕時計だ。

このニキシー管の魅力の虜になってしまった方は、是非NIXOID LAB!のKickstarterキャンペーンをご覧戴くと良いだろう。今回レビューしたNIXOID NEXT通常版と、加速度計機能で腕を捻るだけでも時刻表示の可能なNIXOID NEXT PRO(ボタンを押しての時刻表示のも可能で、加速度機能をオフにすることも可能)の二つのバージョンが存在するのでリワードの選択時にはご注意あれ。

(なおキャンペーンは既に目標金額の2000%を超え、メタルストラップにレザーストラップやカスタムレーザー刻印、追加ケース色、47RONINとのコラボストラップ、ケースのプラズマコーティング、エクスプレス発送の全てのストレッチゴールをアンロックしているという事も付け加えておこう)


Source: Kickstarter

(abcxyz)

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