環境に悪い液体石けんと、清潔感の低い(けどちゃんと泡立てれば衛生的らしい)個体石けん。どちらがどういいのか・悪いのか


液体石けんと環境問題について時折考えていた。液体石けんの大部分は水であり、それを運送するにはエネルギーが費やされる。それならば、固形石けんを使った方がよっぽど環境に良い。だが、固形石けんには衛生面での問題、もしくは懸念を感じていた。

それもあって今までは家で私のみが石けんを使い、妻は詰め替え式の液体石けんで手を洗うようにしていた。(トップ画像参照のこと)

だがこの家庭内別居ならぬ「家庭内別石けん」問題を環境にやさしく、衛生的な手段で解決したかった。結論としては、私の理想と考える製品を見つけることができたのだが(そちらは次回記事でご紹介しよう)、この記事ではそこに至るまでの、「液体石けんと固形石けんどちらがどういいのか・悪いのか」を調べた過程とかを記す。


もくじ

環境に悪い液体石けん
固形石けんと衛生
環境のことを考えなければ液体石けんの方が魅力的だが…
一長一短の解決方法
インスタント液体石けんありませんか?(あった)


環境に悪い液体石けん


この記事を書くに当たって少し液体石けんと固体石けんの環境への影響について調べてみたところ、私の考えはそう外れていないようだった。

ディスカバリーチャンネルジャパンの為に筆者が執筆していたころによく読んでいたZME Scienceの記事「Solid soap vs liquid soap: which is more eco friendly?」によれば、液体石けんのカーボンフットプリントは固形石けんの10倍だ。これは主に液体石けんの製造にエネルギー消費の大きい化学物質が使われることと、プラスチック製のパッケージ製造にも起因する。

更に大抵の液体石けんパッケージはその形状から固体石けんよりも保管運送時に場所を取る。またパッケージがリサイクル可能であってもプラスチックをリサイクルする過程ではまたエネルギーを消費するし、ノズルには金属製のバネが含まれているため完全なリサイクルは難しいだろう。

そうでなくともプラスチックの完全なリサイクルは難しい。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称はNEDO)の2019年のレポート(PDF)を引用しよう。レポート自体はプラスチックを完全にリサイクルできる次世代プラスチックをローレンスバークレー国立研究所で開発したという話題だが、それが世に出るのはまだ先の話。今のところは「リサイクルに最適な資源プラスチックであるPET(ポリエチレンテレフタレート)でも、リサイクルされるのは20-30%のみで、それ以外は大体が焼却か埋立て処理される。埋立てられたプラスチックの炭素豊富な物質が分解するには何百年もかかる」とのこと。LBNL Molecular Foundry のポスドク研究員Peter Christensen氏は「リサイクルできるように製造されているプラスチックは、ほとんどありません」と語ったと記されている。


固形石けんと衛生


しかし、今度は衛生面での問題が出てくる。一人暮らしで客が来ないならまだしも、人の使った石けんを使うという行為は(つまりこれは、他人が汚れた手で触った石けんを触ると言うことだ)、果たして清潔なのか?石けんにバイ菌が残っていたのが自分が手を洗う際に付着しないか?

まあそうであっても石けんで手を洗うことによって洗い流すことができるのだろうけど、それでも固形石けんはよく見ると髪の毛が付いていたりとか清潔感や衛生感は低い(あくまでもこれらは感覚であって実際に衛生、清潔であるかとは異なる)。加えて、固形石けんを置く台に水がずっと溜まっていたり、水垢が付いたりといった問題もある。

固形石けんには利便性の面から来る衛生問題もある。小さくなると二つに割れてしまったり、小さすぎて使いづらかったりと言った問題だ。メッシュに入れることでこの問題は容易に解決できるが、同時にメッシュの編み目に水が溜まり込んでずっと濡れていたりといった清潔感の面の問題はより大きくなる。

特にコロナ時代にあってはこの衛生面での問題や清潔感の問題も深刻に捉えられることだろう。実際に固形石けんは衛生か、清潔かも気になったので調べてみた。

REFINERY29の記事「Is It Hygienic To Wash Your Hands With A Bar Of Soap During Coronavirus?」ではSchweiger Dermatology Group(Dermatologyは皮膚科学)のRachel Nazarian医学博士の引用を訳すと「厳密に言えば、固形石鹸には細菌やウイルスが付着していますが、石鹸を水と合わせて泡立てれば、これらの生物は洗い流されます」とのこと。これは石けんの界面活性剤と水の組み合わせにより、細菌やウイルスを肌から浮かせて流すことができるため。

更には、固形石けんの方が液体石けんよりも悪いとか良いとか言った証拠は出ておらず、固体石けんは抗菌石けんや液体石けんと同様の効果があるそうだ。

と言うことで、知らない人の家で固形石けんを使うことも、お客さんに固形石けんを使ってもらうことも恐れる必要は無さそうだ。が…問題は固形石けんの収納だ。

先のREFINERY29の記事では、固形石けんの収納に関しては気を遣うべきとしている。Nazarian博士は「石鹸とその周辺をできるだけ清潔に保つために、ソープディッシュは非多孔質のものを使うことをお勧め」している(小さい穴がたくさん開いた素材は使わない方が良いと言うこと)。また、石けんは使わない時には乾いた状態であるべきだそうだ。



なるべく石けんとソープディッシュとの接点が少ない方が水が溜まりづらく、清潔に保てるだろう。



石けんは滑り落ちやすいので平らなものよりもこういうものの方が良いかもしれない。



省スペース2段重ねのものもあった。

なお本投稿の写真中で使っているソープディッシュというか石けんスタンドはKickstarterで出資して手に入れたHabitaminブランドのもの。傾いているので水は落ちるが、石けんの溶けたものがディッシュにこびりつく(お湯で簡単に落とせるけど)ことなどから、もしかしたら先にリンクを載せたような金属フレーム性のものの方が見た目的に良いのかなと思ったりも。

もしかしたらソープディッシュはどのようなものであっても、固形石けんを使う限りは頻繁に掃除をしないと清潔感のある見た目を保てないものなのかもしれないが。
 

環境のことを考えなければ液体石けんの方が魅力的だが…


さて、上に述べてきたような事実を皆が理解して、見た目的な清潔感の無さに目をつぶって固形石けんを使うようになれば環境への負担も少しは減るだろうが、そう簡単にはいかない。特に、あまり知らないゲストが家に来た時にいちいち説明して理解を求めるわけにもいかないし。

使用後に水垢や石けん垢(?)が残りやすい固形石けんよりも、液体石けんの方が清潔感があるのは事実だ。そして、コロナ時代にあって、「清潔か」どうかよりも「清潔感があるか」どうかのほうが重要に思われる人も居るだろう。

固形石けんは誰がどこを触ったかわからない。もしかしたらバイ菌が、コロナがそこからウツってしまうんじゃないか…と考える人がいるのも頷ける。もちろん私達は先のNazarian博士の言うようにちゃんと泡立てて洗えば大丈夫と知っているが、全ての人にその知識はないため、あなたの家に来たお客さんがその不安感を感じながら固形石けんを使うことも考えられる。

他方液体石けんであれば、手動で押して出す部分こそ誰もが触るが、固形石けんと異なり「誰がどこを触ったか判らない」という事は無い。



(お金を掛ければ液体石けんを上のような非接触型の電動ディスペンサーにできるだろう。こうすれば非接触を保てる。もちろんそこまで気を遣うなら水道の蛇口も非接触型に、トイレも便座から立ち上がると自動で流れるものに…ときりがなくなる気もするが。)

それに小さくなって割れた固形石けんをメッシュに入れた状態も美しいとは言いがたい。この美しく無さは衛生感の無さ、清潔感の無さに直結し、知り合いや客、家族の頭の中で構築されたあなたの清潔感のイメージにネガティブな影響を与えるかもしれない。

そう考えるとやはり液体石けんの方を使いたくなってくるのも頷ける。しかし環境問題を考えるとやはり、液体石けんには無駄が多すぎる。自然環境の悪化も人間の身勝手さ、手軽さや利便性を求める結果と言って過言ではないだろう。

さらに環境問題は別としても、この液体石けんの運搬、収納のことをデザイン的視点から考えると、様々な点で無駄が多い。どのみち手を洗う時には水を使って石けんを洗い流すのだから、絶対的に使用の際は水が出る場所に居るはずだ(なおZME Scienceの先の記事では、固体石けんの方が水の使用量が液体石けんよりも30%多くなるとのこと)。だから石けん部分が運送の際に液体である必要は全くないはずだ。これは運送コストの面でも言えることだ。

カップヌードルや乾麺を水と一緒に運んで売る位の無駄だ。


これは利用者の視点からも無駄だ。買い物をしてから、必要以上に重いボトルを運ばねばならない。それだけでなく、収納しておく場所も無駄に取る。例えば上の妻の使う液体石けんの詰め替えボトル(3リットル)を見て戴くだけでもその無駄感が判るだろう。

 

一長一短の解決方法


環境問題を優先すれば固形石けんで決まり。利便性を優先すれば液体石けんで決まり。

それでも、環境のことも利便性のことも欲張って追求したい…

そんな場合は、液体石けん、固形石けん、両方の良いところを取ればよいはずだ。そして実際に、両方の悪いところを無くすことは可能だ。手間を掛ければ…?

固形石けんを粉々にして溶かして、劇物である苛性カリ(水酸化カリウムとも)と混ぜ合わせれば良いのだ。手間が掛かっている部分はこの文章では完全に端折っては居るが、そうすれば固形石けんから液体石けんが作れる。(詳しい作り方はWikiHowなどを参考にすると良いだろう)

だが、すりおろし機で固形石けんをすりおろしたり、ミキサーに掛けたり(あとでちゃんと石けん成分がミキサーから落とせるかも心配だ)とかしないといけないので、手間が掛かって色々面倒くさい。劇物を使うというのもちょっと心配だ。



固形石けんと液体石けんの折衷案としては、紙状になっている石けんである「ペーパーソープ」も一つの選択肢ではあるかもしれない。私もこの製品を旅行用リュックの中に入れている。5年以上前に購入して以降使用したことは一度もない。

その理由は、携帯用にデザインされた製品であるため、日常使い、家使いようには適さないためである(し、結局旅行先で必要になることがなかったためだ。まあ旅行時でなくとも災害時・緊急時の備えとして購入したので不満はないが)。ちり紙のように重なって入っているので、使う際には一枚づつ取り出すのだが、濡れた手で触ると溶けてしまうので、手を水で濡らしてからだと取り出せないし、一つのパッケージに入っている量が少ないのも問題だ。


インスタント液体石けんありませんか?(あった)


液体石けんと固体石けんの良いとこどりとして一番良いのは、「インスタント液体石けん」的なものだろう。インスタント麺と同様に、製品に水が含まれないため輸送・保管時に掛かるエネルギーもスペースも少なくて済み、使う前(もしくはボトルに入れる時に)水を加えて液体石けん化する。というものだ。

しばらくネット上を探してみたのだが、なぜだか「インスタント液体石けん」的なものはそう多くみつからなかった。

だがようやく見つけることができた!それは…

…記事が長くなりすぎたので別の投稿にすることにしたので乞うご期待!

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