セイコーSKXとマリーンマスターのオマージュがマリアージュ。HEIMDALLR SKX Marine Master HMSF04-3L



世界に名だたるセイコーSKXのケースに、正統派のマリンマスター文字盤。この二つが夢のマリアージュしてしまったのがHEIMDALLRの『SKX Marine Master』こと型番HMSF04-3L。

サメのロゴであることから「シャーキー」の愛称を持つHEIMDALLRはオマージュウォッチで知られる中国のブランドだ。果たしてどれだけのモノなのだろうか?

オマージュウォッチを快く思わない方も少なからずおられることだろう。筆者のオマージュウォッチに対する考えはこちらの投稿で読むことができる:
オマージュウォッチのジレンマ
なお最後にまた述べるがこのモデルはオンライン腕時計ショップAffordable Dive Watchesで購入することができる。


もくじ

開封:保護材しっかり+ツール付き
ケース:コレジャナイSKX?風防はサファイアでベゼルはSKXより回しやすい
文字盤:蓄光しっかりマリーンマスター300風文字盤
メタルブレスレット:ロック付き三つ折りのソリッド(エンドリンクは少し残念)
まとめ:SKXを置き換えることはないし荒もあるがより優れたスペックとコスパの一本


開封:保護材しっかり+ツール付き


ブランド名とロゴがプレスされたテクスチャーのある紙製化粧箱。


箱は二段構えとなっており、上段には腕時計が。


下段には保証書とブレス調整用の器具、ストラップ外しが入っていた。

何よりも驚いたのは腕時計の丁寧な梱包。風防面も裏面も、メタルブレスも全部保護ラップに包まれ、竜頭の頭には青いシール、ブレスのバックルはそれぞれのパーツが触れあうことのないように間に紙まで挟んであったこと。


ケース:コレジャナイSKX?風防はサファイアでベゼルはSKXより回しやすい


316Lステンレススチール製のケース。確かにケース部分はSKXを彷彿とさせる。


4時位置に突出したねじ込み式竜頭、ベゼル、ラグ、SKXらしさがケースにあると言えるだろう。

なお風防はサファイアクリスタル製。SKXは風防がハードレックスなので、この点ではHEIMDALLRの方が豪華。


それと同時にどことなくSKXとは違う雰囲気も併せ持つ。一体どこが違うのだろうか?


横から見てもやはりSKXっぽいような、ぽくないような…


竜頭頭頂に何も印が無いのはSKXと同じ。


ケース上側にヘアライン仕上げ、側面は艶出し仕上げというのも共通している。


こうして並べてみれば判りやすい。まずベゼルの高さ、そしてこの写真ではケース側面のふっくら具合が異なるのもおわかり戴けるかと思う(写真右のSKX009の方が色っぽい膨らみがある)。


もう二つ大きな違いは、ラグ先端の仕上げ(HEIMDALLRはラグ先まで緩やかなカーブを描く、SKXは先端手前で下方に折れる)、そして竜頭ガードの形状だ。


ベゼル側面の形状はなんとなくSKXの物と似た「手榴弾状の凹凸」ではあるが、HEIMDALLRの物の方が凹凸がはっきりしている。また、SKXのベゼル下部は一度斜めに傾斜してから垂直に下に伸びていたが、こちらは「斜めの傾斜」がない。


写真上がSKX、下がHEIMDALLR。こうしてみるとベゼル側面の指でつまむ部分の高さがHEIMDALLRの方が高いことが判るだろう。

ベゼル自体の高さはHEIMDALLRの方が0.数ミリ高いだけだが、「斜めの傾斜」の代わりに指でつまむ事のできる部分が広いためベゼルその物が大きい印象を与えている。


もちろん指でつまむ範囲が大きいこと、そしてベゼル横の凹凸がはっきりしていることから、HEIMDALLRのベゼルの方が回しやすい。

ベゼルを回す感覚はHEIMDALLRの方が軽い音で、あえて記せば「カリカリ」と「ガリガリ」の中間の音。SKXの深みのあるくぐもった「クリクリ」音とは大きく違う。


ベゼルインサートはセラミック!そのため独特の艶と高級感がある。SKXはアルミなのでこの差は大きい。インデックスは掘り下げられた部分にインクが流されているようだ。


12時のピップが蓄光なのはSKXと共通するが、SKXは蓄光部がベゼルインサートに埋め込まれているのに対してこちらは銀色の縁取りと共にせり出している。

暗所でも触って判ると考えれば嬉しいが、小さな突起が何かに引っかかるのが気になる方はいるかもしれない。


裏面はスクリューバック。ムーブメントはNH35。

(SKXは7S26。SKXで人気のMODとしてはムーブメント入れ替えがある。理由は7S26は古いムーブメントであり、秒針停止機能=ハック機能が付いていないためだ。その際にはNH36が入れ替えようムーブメントとして使用される。NH35はNH36とほぼ同じムーブメントだが、違いはNH35には曜日窓が付いていない。)


SKXの波の代わりに、HEIMDALLRのサメちゃんが。


やはりここでもSKX(右)の全体的な柔らかみがHEIMDALLRにはないのが見て取れる。そして注目して欲しいのはストラップのはまる部分の違い。SKXは左右のラグの間はまっすぐに線が延びているが、HEIMDALLRは湾曲している。


文字盤:蓄光しっかりマリーンマスター300風文字盤

文字盤と針はSKXではなく「マリーンマスター300」のSBEX011やSBDX023がオマージュされている。


文字情報を除けば違うのは日付窓の縁取りの有無くらいだ。


長さ方向にヘアライン仕上げの太いペンシル型の時針。


分針は僅かに先細りするオベリスク型。

アプライドインデックスは銀色の縁取りが文字盤から立体的に突き出る。内部は蓄光だ。


秒針は通天閣みたいな(?)タワーの展望台が先端近くに付いたような形。二分割されていて、先に近い側に蓄光、もう一方は艶のある赤い色が付いている。

この時分秒針の形はどれもSBDX023と同じだ。違いはSBDX023では秒針の色が金色で、二分割はされているがどちらも同色の蓄光となっている点か。


文字情報はもちろんSBDX023とは異なる。「マリーンマスター300」が300m防水であるのに対し、こちらはSKXと同じ200m防水。

SKXではここにオレンジ色で「DIVER'S 200m」と書いてあるのでそれを真似ているのかもしれない。だが注目は「AUTOMATIC」の上に記されたよくわからないマーク。SBDX023ではそこにセイコー・プロスペックスの「X」ロゴがあるのだが、それを彷彿とさせるではないか…

日付窓もしくは日付ディスクがちょっとずれているのか、日付が窓の上辺にギリギリ触れそうで、下には余裕がある。


12時下には銀色のサメが浮かび上がる。

蓄光はしっかりピッカり。


写真右はSKX。多少色合いが違うのがおわかり戴けるだろう。HEIMDALLRの方が蓄光部が分厚いのか均等に明るいのに対し、SKXは縁が少しぼやけるような光り方をする。


メタルブレスレット:ロック付き三つ折りのソリッド(エンドリンクは少し残念)


付属のメタルブレスレットはなかなか良い。

バックルは両サイドのボタンによる三つ折りクラスプにロックもついたしっかりしたもの。


バックルにもサメ君が。


それぞれのコマだけで無くバックルも中抜きのないソリッドメタルで豪華。


3コマともにヘアライン仕上げが丁寧になされている。


もちろんエンドリンクも中空ではなく一つのステンレススチールの塊だ。

エンドリンクの仕上げも良い。しかしピッタリとケースとブレスレットが合うかというと…


横から見るとケース下部から微妙にエンドリンクがはみ出る。


付属の器具ではピンが途中までしか出せないので、その他の工具が無いか他はクリップなどを応用してピンを出すか、時計屋さんに持って行って調整してもらうのが良いだろう。


ピンは真ん中のコマの中にCリングが入っているタイプ(ベイビー・セイコーことSARB035もこのタイプだった)。ピンもCリングも無くしちゃわないよう気をつけよう。


そして、前述した両ラグの間の形状違いのため、HEIMDALLRに付いてきたメタルブレスをSKXで使うことも不可能であれば、SKX専用に作られたCrafter BlueのラバーストラップをHEIMDALLRに取り付けることも不可能だ。


まとめ:SKXを置き換えることはないし荒もあるがより優れたスペックとコスパの一本

実は個人的にはオマージュウォッチを購入するのは初めてであり、オマージュウォッチのモラルジレンマの記事に記したようにその正当性にジレンマを感じていた。

確かにケースの形状こそSKXに酷似する。しかしSKXが廃盤となった今、このHEIMDALLR "SKX Marine Master"は正当化できると感じた。

また、この記事見出しでも「コレジャナイ」と指摘したとおり、これがSKXをそのまま置き換えることはできないこと(SKX専用に作られたストラップがはまらないことも含めて)もオマージュの存在意義を正当化する意味で重要な点だと考えられる。


加えて、廃盤に伴う価格高騰でSKXが3万円する中で、このHEIMDALLRはサファイアクリスタル製風防、セラミックベゼル、ハック機能の付いたNH35、回しやすいベゼル、より明るい蓄光、さらには質の良いメタルブレスレットまでついて、これで2万3000円でおつりが来るのはお得だ。

もちろん完璧とは言えない。エンドリンクがケースからはみ出しているのは(表面からは見えないが)美しくないし、文字盤の日付ディスクの微妙なズレもじっと見つめれば気になる。


確かにこのHEIMDALLRは完璧ではない。だが例えSKXを3万円以上出資して購入しても、これをHEIMDALLRと同じスペックにするにはサファイアクリスタル風防、セラミックベゼル、NH35ムーブメント入れ替えでMODするのには部品代だけで追加で1万円以上は掛かるだろう。

やはりケースがSKXオマージュであるため、マリーンマスターへのオマージュという点はそこまで強くない。マリーンマスター自体の文字盤要素もある意味ではダイバーズウォッチとしてよく使われる要素・形状が用いられているものだし、HEIMDALLRの方ではそれらの位置・比率まで再現しているわけではない。(なおeBayではSKX用のマリンマスター文字盤を購入できたりもするので、SKXのマリーンマスターMODというのはそこまでレアな物でもないのかもしれない。)

SKXの生産終了とそれに伴う価格高騰に嘆く方にも、SKXとうん十万円するマリーンマスターの夢のマリアージュを気軽に楽しみたい方にもいい腕時計と言えるだろう。


冒頭でも述べたとおり、この腕時計は最近立ち上げたオンライン腕時計ショップAffordable Dive Watchesで購入することができる。まだ完全に日本語対応できていないが、何かご質問があれば infoアットマークaffordabledivewatches.comまでご連絡戴ければ日本語で対応します。

なお購入時には当ブログ読者限定のクーポン「THXPALMをご入力戴くことで送料無料になります。

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