今回はセイコー・プレザージュ・カクテルタイムの中でも「深夜のオーセンティックバーとカクテルをイメージした」シリーズから、同名のカクテルをイメージした「オールドファッションド」のパワーリザーブ表示機能付きモデルをご紹介。
最初はこのパワーリザーブ表示機能が付いたモデルは、日付サブダイヤルのせいで文字盤のバランスが悪く醜いと考えていたが、実物を手にしてみると惚れ込んでしまった。なお購入時には文字盤に埃が入っていないかよく確認した方が良いだろう。
これは2019年販売の限定モデルで、生産数は全世界合計僅か8000本。モデルの正式名称は日本では「SARY136」、海外では「SSA392J1」となっている。
「オールドファッションド」は砂糖、ビターズ、ウイスキーを混ぜ「オールド・ファッションド・グラス」(ロックグラスの正式名称)に注いだものにスライスしたオレンジと砂糖漬けチェリーを添えたカクテル。
もくじ
・開封:豪華な化粧箱
・ケース:シンプルな形にこだわりのラグ、大ぶりの竜頭
・文字盤:見飽きることのない美しく深みのある色合い
・ストラップ:スタイルの異なる2本の三つ折れバックル
・品質管理に問題?購入時は要注意
・美しくない…かと思ったら虜になった
以前よりカクテルタイムには興味があったが、直接の購入動機は、少し前にオリエント・バンビーノをセイコー・カクテルタイムの廉価版として紹介したことに遡る。
片方を手にすることなく一方から他方を判断するという意味ではレビューワー当人もバンビーノを手にせずにそう言い切っているのであろうと推測するが、どうせなら両方所有してからもう一度考えてみたいとも思っていた。
そんな折に今回ご紹介する「オールドファッションド」ことSARY136/SSA392J1の割引に出会ってしまったのだ。
パワーリザーブ表示機能の付いていない方が、絶対的かつ圧倒的に美しいと感じていた。
だが、カクテルタイムへの興味は、そんなセイコーの作る時計の美への興味では無かった。それとは逆に、パワーリザーブ表示付きの、美しくないモデルが気になったのだ。何故醜いモデルが何年間も売られ続けているのか?
全体としてなんとなく見るとそれなりに美しく見えるのだが、一度日付表示サブダイヤルに目が行くと、それが全てを台無しにしてしまう。日付を示したリング状の部分が文字盤のその他全ての要素と異質な浮いた存在になっており、個人的にはこの部分がデザイン的に全体と調和が取れていないように感じるのだ。
カクテルタイムというシリーズの中にある美しさは、氷の破片のようなカタチのインデックスが造り出す、数字の少ない美しさ。つまり「文字」という、特定の意味を伝えるという意図を持った形状の代わりに、より自然物的な、それそのものでは感情とか印象とか言った抽象的な意図を伝える「カタチ」が使われていることにあると思うのだ。
だから数字が向きを途中で変えながら所狭しと並び、「31」のみが小さく書かれた日付サブダイヤルを、この文字盤に不釣り合いな醜い存在だと見てしまう。本当ならパワーリザーブ表示部分だって文字数字の類いは欠いた方が良いと思うし、「AUTOMATIC」という表記も(秒針の動きを見れば判るので)無くて良いとも感じる。
もう既に何本もセイコーの腕時計を購入しており、その全てに独特のセイコーらしい美が備わっていることを認識している。そしてそれら所有するものほぼ全てが5万円以下の腕時計だ。(セイコーのより高級な腕時計はフィンランドのセイコーファン達に見せてもらうか、フィンランドで行われたグランドセイコーのイベントで眺めるかぐらいの経験しか無く、じっくりとその美を考察・堪能する機会はなかった。)
しかしカクテルタイムのパワーリザーブ表示モデルは非限定版でも6万円台だ。
高級時計という値段では無いものの、安くはない。なのにカクテルタイムはパワーリザーブ表示付きモデルも売れ続けているようで、2017年のセイコー・プレザージュ ブランドにカクテルタイムが入ってから少なくとも2019年まで出され続けていた。(後述の2020年「新しいカクテルタイム」や、2019年末のオープンハートモデルにはパワーリザーブ表示機能付きモデルが存在しないが、これらはそもそものスタイルがだいぶ異なるのでそれを省いた話となるが。)
そんな中で、今回レビューする限定版モデルは定価税込み8万8000円もする。少し手を伸ばせば10万円台のプレザージュ琺瑯ダイヤルなんかが購入できる値段だ(皮肉なことにこの琺瑯ダイヤルモデルSARX049の実売価格は8万円台まで下がっているが):
だからこそ気になったのだ。人々はそこに美を見いだし購入したのか。セイコーはそこに美を見いだし作ったのか。価格相応の美を。スクリーンからは見えてこない美を。
おなじみの白い厚紙製の「化粧箱カバーカバー」。横からスライドさせると中の「化粧箱カバー」が出てくる。
黒い「化粧箱カバー」には金色のSEIKOロゴが箔押しされている。
購入動機:セイコーなのに美しくないから
購入動機を長く書いてしまったので、そんなの興味が無いという方は開封の儀式もしくはケースのレビュー部分まですっ飛ばされると良いだろう。以前よりカクテルタイムには興味があったが、直接の購入動機は、少し前にオリエント・バンビーノをセイコー・カクテルタイムの廉価版として紹介したことに遡る。
直接の購入動機
その記事中に紹介したAmazonレビューで、カクテルタイムがオリエントの時計(特に明記されていないがバンビーノであろうと想像)と比べて「倍の金額の価値がある」とあったのだが、当時の私はこれまでカクテルタイムを手にしたことはなかった。そのため記事では「プレザージュにはそう言わせるほどの所有欲を満たす喜びがあるようだ」と書いた。片方を手にすることなく一方から他方を判断するという意味ではレビューワー当人もバンビーノを手にせずにそう言い切っているのであろうと推測するが、どうせなら両方所有してからもう一度考えてみたいとも思っていた。
そんな折に今回ご紹介する「オールドファッションド」ことSARY136/SSA392J1の割引に出会ってしまったのだ。
美しくないから
しかし、同じ「オールドファッションド」でも、パワーリザーブ表示機能が付いていない方が美しいとも感じていた。(パワーリザーブと日付表示のないよりシンプルな方の「オールドファッションド」モデルは日本名をSARY134、海外名をSRPD36J1と言う:)パワーリザーブ表示機能の付いていない方が、絶対的かつ圧倒的に美しいと感じていた。
だが、カクテルタイムへの興味は、そんなセイコーの作る時計の美への興味では無かった。それとは逆に、パワーリザーブ表示付きの、美しくないモデルが気になったのだ。何故醜いモデルが何年間も売られ続けているのか?
全体としてなんとなく見るとそれなりに美しく見えるのだが、一度日付表示サブダイヤルに目が行くと、それが全てを台無しにしてしまう。日付を示したリング状の部分が文字盤のその他全ての要素と異質な浮いた存在になっており、個人的にはこの部分がデザイン的に全体と調和が取れていないように感じるのだ。
カクテルタイムというシリーズの中にある美しさは、氷の破片のようなカタチのインデックスが造り出す、数字の少ない美しさ。つまり「文字」という、特定の意味を伝えるという意図を持った形状の代わりに、より自然物的な、それそのものでは感情とか印象とか言った抽象的な意図を伝える「カタチ」が使われていることにあると思うのだ。
だから数字が向きを途中で変えながら所狭しと並び、「31」のみが小さく書かれた日付サブダイヤルを、この文字盤に不釣り合いな醜い存在だと見てしまう。本当ならパワーリザーブ表示部分だって文字数字の類いは欠いた方が良いと思うし、「AUTOMATIC」という表記も(秒針の動きを見れば判るので)無くて良いとも感じる。
そこに美は見いだせるのか
安くて醜いならなんとなく理解できそうなものだ。だがこれまでの経験からすれば、安いセイコーも必ず美しい。もう既に何本もセイコーの腕時計を購入しており、その全てに独特のセイコーらしい美が備わっていることを認識している。そしてそれら所有するものほぼ全てが5万円以下の腕時計だ。(セイコーのより高級な腕時計はフィンランドのセイコーファン達に見せてもらうか、フィンランドで行われたグランドセイコーのイベントで眺めるかぐらいの経験しか無く、じっくりとその美を考察・堪能する機会はなかった。)
しかしカクテルタイムのパワーリザーブ表示モデルは非限定版でも6万円台だ。
高級時計という値段では無いものの、安くはない。なのにカクテルタイムはパワーリザーブ表示付きモデルも売れ続けているようで、2017年のセイコー・プレザージュ ブランドにカクテルタイムが入ってから少なくとも2019年まで出され続けていた。(後述の2020年「新しいカクテルタイム」や、2019年末のオープンハートモデルにはパワーリザーブ表示機能付きモデルが存在しないが、これらはそもそものスタイルがだいぶ異なるのでそれを省いた話となるが。)
そんな中で、今回レビューする限定版モデルは定価税込み8万8000円もする。少し手を伸ばせば10万円台のプレザージュ琺瑯ダイヤルなんかが購入できる値段だ(皮肉なことにこの琺瑯ダイヤルモデルSARX049の実売価格は8万円台まで下がっているが):
だからこそ気になったのだ。人々はそこに美を見いだし購入したのか。セイコーはそこに美を見いだし作ったのか。価格相応の美を。スクリーンからは見えてこない美を。
開封:豪華な化粧箱
黒い「化粧箱カバー」には金色のSEIKOロゴが箔押しされている。
これまで見てきたセイコーの化粧箱はどれも銀の箔押しだったので少し新鮮。本体色が金色だからだろうか。
裏には素材などの情報も金で箔押し。この化粧箱カバーの横からようやく出てくるのが…
化粧箱フィルムに包まれた化粧箱(と、その下に説明書と保証書)。カバーにカバーにフィルムに、まるでマトリョーシカのようだ。保証書はカードになっている。
化粧箱は上下に分かれていて、上蓋を取り外すとこうなる(また保護紙だ)。
側面からみると、やはりベゼル下部がくびれているのが判るはず。これはこれまでレビューしてきたセイコーの腕時計たちと共通する。
先ほど「金色の文字盤要素が浮かび上がる」と書いたが、実際に各時インデックスは文字盤から浮かび上がっているように見える。実際には浮いているわけではないのだが、側面が僅かに内向きに傾斜しているようで、それがつくり出す影と、インデックス上面の輝きが合わさって浮いているように見える。
時分針はどちらも菱形のダフネ針。ぱっと見ただのダフネ針ではあるが、ここはセイコーの精巧さが見える部分だ。実は傾斜面の片面は艶消し仕上げで、もう片面は艶出し仕上げ(写真では時針の上面が艶出し、下面が艶消し)。芸が細かい!針の可視性を高める為の工夫だろう。
12時から4時過ぎまでの位置に示されるパワーリザーブ表示機能は嬉しい。特にパワーリザーブが40時間ほどあるモデルだし、ということは少なくともフルにゼンマイが巻かれた状態であればギリギリ1日半着用しなくても時計が止まらず動いていてくれるはず。
パワーリザーブ針は、中心から一直線に伸びた先にコンコルドのような形となっている。先端は茶色い色に粒子状のテクスチャーの塗装がされている。
クロコダイル竹符の型押しは、アルピニストSARB017付属のものに似ている。しかし着け心地は格段にオールドファッションドの方が良い。
カクテルタイムは、広告の力を使わずともここ10年売れ続けているシリーズだそうだが、こんな美しい文字盤の写真がSNSでシェアされているのを見たら欲しくなるのも判る。
今回ご紹介したような、通常の放射線状の線が延びた文字盤とは異なるカクテルタイムが欲しいと言う方は、以下に挙げるモデルもチェックされると良いだろう。
例えば限定「Fuyugeshiki/冬景色」ことSARY103、SARY105、SRRY033:
どちらも限定版で銀座STAR BARコラボモデルである「桜吹雪」ことSARY089、SARY091と、「Starlight」SARY085、SARY087:
こちらも限定で銀座STAR BARコラボの蜂の巣状の文字盤にオープンハートの「ハニカム」モデル:
折り重なる「波紋」が印象的なオープンハートモデル:
また2020年に発表された「都会で過ごす日常から離れ、旅先のバーで出会った」、「新しいカクテルタイム」は色の濃い通常版(下アマゾンリンク)と、各5000本限定の淡い色のSARY171、SARY169(下記楽天リンク)が存在する:
裏には素材などの情報も金で箔押し。この化粧箱カバーの横からようやく出てくるのが…
化粧箱は上下に分かれていて、上蓋を取り外すとこうなる(また保護紙だ)。
上蓋の裏には金色で「SEIKO」、「PRESAGE」そして「LIMITED EDITION」(限定版) と記されている。
保護紙の下にはようやく出てくたオールドファッションドと替えのストラップが並ぶ。 興奮してピンボケしてしまったけど、箱を開けて現物を見ただけでこれまでレビューしてきたどの腕時計とも違う存在感が感じられる。
ゴールド色のケースはステンレススチール製で、横幅40.5mm。ラグから反対のラグまで(時計縦方向の長さ)47.5mm。厚さは14.4mmと、ダイバーズウォッチ並の分厚さ。
分厚いのはボックス型ハードレックスのためもあるだろう。ハードレックスはセイコーの特殊強化加工処理を施した無機ガラスだ。より安価なセイコー・ファイブなど(のフラットな風防など)で使われているのを目にすることも多いが、こちらはボックス型。ぷっくらと膨らみを帯びた形がなんとも言えない味を出している。
ダイバーズウォッチ並の分厚さではあるが、縁が緩やかに傾斜するボックス型風防のお陰もあり、袖などに突っかかることは少ない。
保護紙の下にはようやく出てくたオールドファッションドと替えのストラップが並ぶ。 興奮してピンボケしてしまったけど、箱を開けて現物を見ただけでこれまでレビューしてきたどの腕時計とも違う存在感が感じられる。
ケース:シンプルな形にこだわりのラグ、大ぶりの竜頭
分厚いのはボックス型ハードレックスのためもあるだろう。ハードレックスはセイコーの特殊強化加工処理を施した無機ガラスだ。より安価なセイコー・ファイブなど(のフラットな風防など)で使われているのを目にすることも多いが、こちらはボックス型。ぷっくらと膨らみを帯びた形がなんとも言えない味を出している。
ダイバーズウォッチ並の分厚さではあるが、縁が緩やかに傾斜するボックス型風防のお陰もあり、袖などに突っかかることは少ない。
側面からみると、やはりベゼル下部がくびれているのが判るはず。これはこれまでレビューしてきたセイコーの腕時計たちと共通する。
ぱっと見気付くのは難しいが、by Seiko watch designのデザイナーインタビューで語られるカクテルタイムの特徴としてラグ部分がある。
多くの場合腕時計のラグは時計部の左右端から線が延びるか、ストラップの幅に水平に伸びるかしている。しかしカクテルタイムのラグは、左右の端から伸びているわけではないが、水平に伸びるわけでもなく、その中間的な形をしている。
参考までに、「上時計左右端から線が延びるラグ」のセイコー・アルピニストSARB017、中央が今回レビューのオールドファッションド、下が「ストラップの幅に水平に伸びるラグ」オーストラリアのマイクロブランドMAS WatchesのThe Irukandji(ムーブメントは4R35と同等のSeiko NH35)。オールドファッションドのラグが中間的な形であることがお判りだろう。
なおオリエント・バンビーノもこれに似たラグ形状だ。
大ぶりな竜頭もカクテルタイムの特徴。
横から見ると外側に行くほど広がった形をしており、まさに「crown/王冠」のようだ(竜頭は英語で「crown」と言うが、これは冠の意味も持つ)。
竜頭頭頂には所謂「蛇S」マークが彫り込まれている。
防水性能は「日常生活用強化防水(5気圧)」と控えめ。通常竜頭がねじ込み式(竜頭がふとした拍子に引き出されないようにねじ込むことでロックするもの)のモデルはより防水性能が高くなっている。例えばSKX007/009は200m、アルピニストSARB017は20気圧。(SKXが「20気圧」ではなく「200m」と記されているのは潜水用であるためで、SARBの方は本格的な潜水には適さないようだ、詳細は日本時計協会をご参考あれ。)
その一方で、「セイコーの良心」、「ベイビー・グランドセイコー」などの異名を持つ名モデルSARB035はねじ込まない竜頭だが防水性能は10気圧となっている。もしかしたら竜頭形状が引っ張られやすいことが控えめな防水性能に影響しているのかもしれない。
前述の日本時計協会によれば5気圧は「水に触れる機会の多い水仕事(漁業・農業・洗車・食堂など)や水上スポーツ(水泳・ヨット・つりなど)をされる方にお使いいただけます」とのことなので、ドレッシーな腕時計としては十分な防水性能と言えるだろう。
裏蓋はエキシビションバックでねじ込み式。裏蓋には性能表記等が刻印されているシリアルナンバーもここに「XXXX/8000」と記してある。
「4R57-00M0」、「R2」、の横にある「n」字の下にアンダーバーがある記しは帯磁性能。この耐磁性能表記は、取説によればJIS水準1種で「磁気製品より5cm以上遠ざける必要があります」という性能。 この表記がないモデルでは10cm以上遠ざける必要がある。この耐磁性能はSARB035と同じ。
使用ムーブメントは4R57。29石、ハッキング機能あり(時刻合わせの時に秒針が止まる)。パワーリザーブは41時間。公式日差は+45秒~-35秒だが、実際の使用では日差が+6秒とか、-7秒とか言った報告もある。 私のものは最初に手に入れたもの(後述するが、最初に届いた物は文字盤に埃、ムーブメント共に埃や傷が見られたので交換した)は日差が-2秒、現在持っているものは日差+8秒。
防水性能は「日常生活用強化防水(5気圧)」と控えめ。通常竜頭がねじ込み式(竜頭がふとした拍子に引き出されないようにねじ込むことでロックするもの)のモデルはより防水性能が高くなっている。例えばSKX007/009は200m、アルピニストSARB017は20気圧。(SKXが「20気圧」ではなく「200m」と記されているのは潜水用であるためで、SARBの方は本格的な潜水には適さないようだ、詳細は日本時計協会をご参考あれ。)
その一方で、「セイコーの良心」、「ベイビー・グランドセイコー」などの異名を持つ名モデルSARB035はねじ込まない竜頭だが防水性能は10気圧となっている。もしかしたら竜頭形状が引っ張られやすいことが控えめな防水性能に影響しているのかもしれない。
前述の日本時計協会によれば5気圧は「水に触れる機会の多い水仕事(漁業・農業・洗車・食堂など)や水上スポーツ(水泳・ヨット・つりなど)をされる方にお使いいただけます」とのことなので、ドレッシーな腕時計としては十分な防水性能と言えるだろう。
裏蓋はエキシビションバックでねじ込み式。裏蓋には性能表記等が刻印されているシリアルナンバーもここに「XXXX/8000」と記してある。
「4R57-00M0」、「R2」、の横にある「n」字の下にアンダーバーがある記しは帯磁性能。この耐磁性能表記は、取説によればJIS水準1種で「磁気製品より5cm以上遠ざける必要があります」という性能。 この表記がないモデルでは10cm以上遠ざける必要がある。この耐磁性能はSARB035と同じ。
使用ムーブメントは4R57。29石、ハッキング機能あり(時刻合わせの時に秒針が止まる)。パワーリザーブは41時間。公式日差は+45秒~-35秒だが、実際の使用では日差が+6秒とか、-7秒とか言った報告もある。 私のものは最初に手に入れたもの(後述するが、最初に届いた物は文字盤に埃、ムーブメント共に埃や傷が見られたので交換した)は日差が-2秒、現在持っているものは日差+8秒。
ローターは金色のものが使用されている。写真ではわかりにくいかもしれないが、ローターは表面に細かな擦れ後が多く付いている。
また、ムーブメントの方も細かな傷が見られるし、ネジ頭も美しくない(上の写真ではローターの小傷も見えるだろう)。これに関しては
残念ながらムーブメントをケース内に固定する部品は灰色のプラスチック製。 頑張って覗き込まないと普段は見えないものではあるが、上品さを売りするモデルなのでここは見えないようにするか、金属にするなどして工夫して欲しかった。
光を浴びたときのこの色の現れ方が艶めかしい! 風防の透明度が高い(?)ためか、文字盤の明暗コントラストが高いためか、他のセイコーの腕時計と比較しても文字盤がくっきり見える。
文字盤:見飽きることのない美しく深みのある色合い
文字盤には全部で5針;中心から出た時分秒針とパワーリザーブ針、そして文字盤中心と6時の間の日付表示サブダイヤルから出た針だ。
(アルピニストSARB017との文字盤比較)矛盾を承知で言えば、それと同時に風防の光の映り込みも激しい。それでも何故か文字盤がくっきり見える気がするのだ。
複雑なテクスチャーのある茶色の文字盤に、金色の文字盤要素が浮かび上がる。
カクテルタイムの多くのモデルは、放射線状に中央から線が延びて美しい立体を作るのだが、このオールドファッションドモデルはそれらとは異なるユニークな美しさを持つ。
(参考までに通常の文字盤モデルはこんな感じ)
by Seiko watch designのデザイナーインタビューによれば、このモデルは「ウイスキーの丸氷をイメージしたダイヤルの型打ちデザイン」になっているとのこと。ウイスキー・カクテルをモチーフにしたモデルならではだ。
カクテルタイムの多くのモデルは、放射線状に中央から線が延びて美しい立体を作るのだが、このオールドファッションドモデルはそれらとは異なるユニークな美しさを持つ。
(参考までに通常の文字盤モデルはこんな感じ)
by Seiko watch designのデザイナーインタビューによれば、このモデルは「ウイスキーの丸氷をイメージしたダイヤルの型打ちデザイン」になっているとのこと。ウイスキー・カクテルをモチーフにしたモデルならではだ。
茶色部分は、外側に行くほど色が濃くなるグラデーションがかかっている。確かに中央のみ色が明るい様子は確かにグラスに入った丸氷のようでもある。タイガーズアイ/虎眼石も彷彿とさせる。
このインタビューではカクテルタイムでは、型打ちされた文字盤に、刷毛目を入れてから、透明な塗料を塗ってから平坦に磨き上げる「クリアラップ」加工、と文字盤に多くの工程を費やしていることが語られている。上の図を見ても判るように、放射線状のモデルが例に出されているのでオールドファッションドも全く同じ工程かは判らないが、このグラデーションを出すためには端に行くほどカーブがかかった文字盤に型打ちした後に半透明の色が流し込まれているに違いない。それが磨かれてから細かなインデックスやパワーリザーブのプリントを入れているのだろうか。
そしてこの文字盤にドーム状の風防が相まって、キャンディーのような見た目になるのが良い!まさにeye candy/目の保養だ。
特に外側近くのほぼ真っ黒な部分は、強く光を浴びても黒いままで、そのような状態では特に文字盤のくっきりさが目立つ。と言うことはやはりコントラストでくっきり感が生まれているのか。
インデックスは12,3,6,9時部分が大きく、それ以外の各時は少し小さい。
6時インデックスは日付サブダイヤルがあるので上半分が欠けた形となっているが、そのほかは「氷の破片」をイメージしたような立体的な菱形。
先ほど「金色の文字盤要素が浮かび上がる」と書いたが、実際に各時インデックスは文字盤から浮かび上がっているように見える。実際には浮いているわけではないのだが、側面が僅かに内向きに傾斜しているようで、それがつくり出す影と、インデックス上面の輝きが合わさって浮いているように見える。
時分針はどちらも菱形のダフネ針。ぱっと見ただのダフネ針ではあるが、ここはセイコーの精巧さが見える部分だ。実は傾斜面の片面は艶消し仕上げで、もう片面は艶出し仕上げ(写真では時針の上面が艶出し、下面が艶消し)。芸が細かい!針の可視性を高める為の工夫だろう。
時針とインデックスの長さが丁度あっていて、5分おきに一つの直線のように揃うのも美しい。
秒針はぱっと見SARB035のものによく似ている。特にカウンターウエイトの中抜きの菱形部分がそれだが、セイコーのカクテルタイム・ミッドナイト特設サイトによれば「こだわりの世界への扉を開く、鍵を連想させるゴールドカラーの秒針」だそうだ。
そのこだわり、そしてSARB035の秒針との違いは、先端がカーブしている「曲げ針」となっているところ。(このカーブした秒針に魅力を感じたらオリエント・バンビーノもより財布にフレンドリーかつ優良な代替案である)
だがオリエント・バンビーノとは違い、こちらは秒針だけでなく分針の先もまた曲げ針となっている。この曲げ針となった秒針と分針については、STAR BAR限定モデルの特設サイト(別モデル)では、これは「視認性を高め」るもので、加工は「針の先端を手で曲げて形作る」、「職人技」と記してある。
12時から4時過ぎまでの位置に示されるパワーリザーブ表示機能は嬉しい。特にパワーリザーブが40時間ほどあるモデルだし、ということは少なくともフルにゼンマイが巻かれた状態であればギリギリ1日半着用しなくても時計が止まらず動いていてくれるはず。
パワーリザーブ表示機能のない腕時計では残りのパワーがどれだけあるか知る術がないが、このようなパワーリザーブ表示機能があれば「フルに巻かれてるから明日は別の腕時計を着けて、明後日はまたこれを着けよう」と言った風に予定立てて時計を身につけるのにも便利だ。
パワーリザーブ針は、中心から一直線に伸びた先にコンコルドのような形となっている。先端は茶色い色に粒子状のテクスチャーの塗装がされている。
個人的には時分秒針と共にパワーリザーブの金色に輝く針が文字盤にあるのは、やり過ぎにも思える。長く伸びた部分が艶消しで目立たない作りであれば、よりパワーリザーブの針そのものを目立たせることなく、その機能を指す先端部のみを目立たせることができたのでは無いかと思う。
日付サブダイヤルは文字盤から突き出したリング部分に日付が記されたリングが乗って構築される。どちらもよく見るとレコード状の細かな溝が入っている。
特にサブダイヤル内部が他の文字盤部分とは異なるテクスチャーとなっており、文字盤のアクセントとして機能している。
特にサブダイヤル内部が他の文字盤部分とは異なるテクスチャーとなっており、文字盤のアクセントとして機能している。
だがサブダイヤル内部と、文字盤と日付リングの内側側面は仕上げが全くなされていないのか、銀色の板に少し茶色の塗料が掛かったような感じで美しくない。
後に「品質管理に問題?」項目で述べるが、どうやらこのモデル特有の欠点として、文字盤に細かな埃が混入しているものがたまに見られるようだ。今回レビューしているのは交換品。文字盤の埃はとても少ないが、最初のものは上の写真のようにロゴに繊維が挟まっていたりと、質の悪さが目立ったので交換したのだ。
やっぱりこのサブダイヤルは日付の読み取りには相応しいとは思わないが、長くこの時計を眺めてみると、これは当初思っていたようなバランスの悪い「醜い時計」ではなく、「個性的な顔立ちの時計」という気がしてきた。うん、売れるのも判る。
また、パワーリザーブ機能は要らないという方であれば、よりシンプルで調和の取れたSARY134を購入されると良いだろう:
ドレスウォッチなので蓄光は無いが、「仄暗い」程度の明るさがあれば、光を反射し輝くインデックスと針のお陰で時刻は読み取ることができるはずだ。
(茶色系のプレザージュ・カクテルタイムでは他にも「アイリッシュコーヒー」SPRE11J1、SSA401J1などもある:)
幅20mmのストラップ。光沢のある濃い焦げ茶色のものと、より明るい茶色でクロコダイル竹符(鱗っぽい形)の型押しがなされたもの、この2種類のカーフレザーストラップが付属。購入してすぐにストラップ付け替えができるのは嬉しい。
ドレスウォッチなので蓄光は無いが、「仄暗い」程度の明るさがあれば、光を反射し輝くインデックスと針のお陰で時刻は読み取ることができるはずだ。
(茶色系のプレザージュ・カクテルタイムでは他にも「アイリッシュコーヒー」SPRE11J1、SSA401J1などもある:)
ストラップ:スタイルの異なる2本の三つ折れバックル
工具無しで付け替えも容易に愉しめるようにストラップはどちらもクイックリリース式となっているのも良い点だ。
どちらのストラップもケースと同色のゴールド色バックルが付いている。どちらもバックルはワンプッシュ三つ折れ式。
どちらのストラップもケースと同色のゴールド色バックルが付いている。どちらもバックルはワンプッシュ三つ折れ式。
このタイプのバックルは、毎回同じストラップホールを探して差し込む手間を省くことが出来るほか、腕時計を着け外しする際に落としづらくなり(「外した」状態でもループになっているため)、レザーストラップが痛みづらいという利点を持つ。
特に落としづらくなる点は、ぷっくらしたハードレックス風防が傷つかないようにするためにもありがたい。
濃い茶色のものは、スティッチが少し明るいブラウン色となっており、スティッチが目立つようになっており、ちょっとレトロっぽい感じ。
濃い茶色のものは、スティッチが少し明るいブラウン色となっており、スティッチが目立つようになっており、ちょっとレトロっぽい感じ。
実は前述のby Seiko watch designのインタビューによれば、ストラップも「ビンテージ感のある濃い茶色を選んで、全体として大人っぽいデザインに」しているとのことなのでうまくその感じが出ているんじゃ無いかと思う。
この写真のアングルのせいもあるが、私の手首径16~17cmだと時計部が少し大きめに見え、こちら側からはあまりストラップが見えないかも。
こちらのスティッチはレザーの色とほぼ同じで目立たない。
どちらもドレッシーだが、明るいブラウンのストラップの方がすこしカジュアルに見えるかもしれない。
クロコダイル竹符の型押しは、アルピニストSARB017付属のものに似ている。しかし着け心地は格段にオールドファッションドの方が良い。
ストラップのラグに近い部分はストラップホールのある部分などと比べて、どちらも心材が分厚くなっているのだが、それでもオールドファッションドの方がアルピニストよりも薄い。これが着け心地の良さに繋がっているのだろう。
品質管理に問題?購入時は要注意
詳細は前回投稿した記事『「セイコー品質」に問題?埃の混入したプレザージュについてセイコーに確認してみた』をお読み戴きたいが、実は今回購入して最初に届いた時計は、文字盤にもムーブメントにも細かな糸くずが入り込んでいた。
加えて、ムーブメント側はお世辞にも綺麗ではなかったし、更には説明書がこの腕時計の4Rムーブメント用のものではなく6Rムーブメント用のものだった。
幸いにもセイコーの正規販売店で購入したこと、そして購入してすぐに未着用の状態で気付いたことで、より文字盤が美しい品に交換してもらうことができた。
特に文字盤を愛で、じっくり眺めるタイプのモデルなので文字盤内のゴミは致命的だ。ご購入の際はよく確認されたし。
まとめ:美しくない…かと思ったら虜になった
暗い室内では全体的にダークな深みのあるブラウン、明るい陽の光を浴びると文字盤中央部分がライトブラウンに輝き、そのテクスチャーを明らかにする。
この美を極めた文字盤に、風防のレンズ状の歪みとふっくらさが付け足されることで、腕時計という実用性を持った道具が、手元を飾るアクセサリーへと昇華される。
もちろんこれは完璧な腕時計ではない。ムーブメントホルダー部分がプラスチックがそのまま見える点や、品質管理が行き届いていない点もある。このうち品質管理については懸念すべき点だ。『「セイコー品質」に問題?埃の混入したプレザージュについてセイコーに確認してみた』の記事にも書いたが、購入の際は実店舗で現物を確認して購入するか、購入後の返品交換が可能な信頼できる正規販売店で購入すべきだろう。
そのような不満点はあるものの、それでもこの腕時計は同価格帯のそんじょそこらの腕時計と比較しても格段に美しい、人目を惹きつける文字盤であることは疑う余地はない。 欠点を補ってあまりあるほどの美を備えた腕時計だ。
冒頭に、このパワーリザーブ表示機能付きモデルは「セイコーなのに美しくない」と思っていたと書いた。今でも写真だけを見ると変にサブダイヤルが目立って微妙に感じるのだが、それはただ写真という2次元的な性質のなせる技かもしれない。だが不思議なことに、こうして手元にこの腕時計を置くと、全体的な立体感の中で、見る角度が僅かに変わるだけで異なる表情を見せる一つ一つの美的要素の中に違和感なく収まっている。
カクテルタイムは、広告の力を使わずともここ10年売れ続けているシリーズだそうだが、こんな美しい文字盤の写真がSNSでシェアされているのを見たら欲しくなるのも判る。
プレザージュ・カクテルタイムにはいろいろなモデルがあるが、金のケースに金の文字盤要素、細やかな文字盤テクスチャー、そしてその金色とマッチする濃い茶色の文字盤という色の組み合わせはこの「オールドファッションド」しかない。
また、やっぱり日付サブダイヤルやパワーリザーブ表示部分が気になるという方は、オールドファッションドのパワーリザーブ表示機能が無いバージョン、SARY134がいいだろう:
今回ご紹介したような、通常の放射線状の線が延びた文字盤とは異なるカクテルタイムが欲しいと言う方は、以下に挙げるモデルもチェックされると良いだろう。
例えば限定「Fuyugeshiki/冬景色」ことSARY103、SARY105、SRRY033:
どちらも限定版で銀座STAR BARコラボモデルである「桜吹雪」ことSARY089、SARY091と、「Starlight」SARY085、SARY087:
こちらも限定で銀座STAR BARコラボの蜂の巣状の文字盤にオープンハートの「ハニカム」モデル:
折り重なる「波紋」が印象的なオープンハートモデル:
また2020年に発表された「都会で過ごす日常から離れ、旅先のバーで出会った」、「新しいカクテルタイム」は色の濃い通常版(下アマゾンリンク)と、各5000本限定の淡い色のSARY171、SARY169(下記楽天リンク)が存在する:
限定モデルは値段が高めだが、プレザージュ・カクテルタイム全般で言えば、これだけ目を見張る文字盤仕上げをこの価格帯(約3~8万円)で買えてしまうのは凄いことだと改めて感心した。
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