Sponsored by FineWatchesBerlin
ドイツの首都ベルリンから、バウハウスにインスパイアされた洗練された腕時計を目指す父娘ブランド、FineWatchesBerlinの腕時計。今回レビューするのは、TEUFELSBERGコレクションよりWhite #2。
一体どんなブランドなのか、そしてどんな腕時計に仕上がっているのかじっくり見ていこう。
もくじ
・FineWatchesBerlinとは?
・ベルリンの歴史を冠したトイフェルスベルク・コレクション
・開封
・ケース
・文字盤
・ストラップ
・まとめ
FineWatchesBerlinとは?
Image courtesy of FineWatchesBerlin
ドイツFineWatchesBerlinは2017年創立の家族経営の腕時計ブランドだ。
1957年に生まれたWilfried Liefer氏と、1987年生まれの彼の娘、Mia Phyllis Liefer氏の父娘で造り上げたブランドという。
今から40年前、当時20代だったWilfried氏はもともと金細工師であった。その当時からデザイン、宝石、腕時計、インテリア、建築、と様々なジャンルに関わりを持っていた氏だが、Watch Digのインタビューによれば今から30年前から腕時計ブランドを作ることを夢に抱いていた。その夢はしばらく忘れ去られていたものの、2017年にまた自らの腕時計ブランドを作る夢に火が点いた。(また、10代後半の時には建築現場で熱管理士として働いていた経歴、そしてその後に金や銀などの(貴)金属関連の仕事をしていたことで培った知識は腕時計を作るにも役立ったそうだ。)
Mia Phyllis氏は元々プロのマーケターで、音楽やアートシーンにも造詣が深い人物。(同じくWatch Digによれば)彼女は始めのうちは父が今度は何を始めたのかと遠巻きに見ていたようだが、マーケティングのプロだし彼の娘だし、一緒になってやるのは良いアイデアかも。と思い立ち、Wilfried氏に参加について尋ねたところ「そう言ってくれるのを待ちわびていたんだよ!」ということで参加に至ったという。
デザインと技術面をWilfried氏、マーケティングとフレッシュなアイデアをMia Phyllis氏。父と娘がそれぞれの専門性を活かして生み出されたのがFineWatchesBerlinなのだ。
なお、ブランド名のFineWatchesBerlinは、略すとFWB。文字や単語を並べ遊ぶうちにこれを思いついたそう。Wilfried氏本人の言葉を借りれば「IWC , BWC, .....FWB !」とのこと。なるほど。
そしてブランド名には故郷のベルリンという名称、そしてブランドが作る腕時計のスタイルを示す要素を取り入れたかったとのこと。もしダイバーズウォッチやスポーツウォッチを作るブランドだったら「SportsWatchesBerlin」と名付けていたことだろう。とのこと。その代わりにブランドの名称となったのが、「ベルリン」と「洗練された腕時計」を組み合わせた「FineWatchesBerlin」というわけだ。
チャリティーにも積極的で、ドイツで在宅ケアを受ける子供の末期患者が最後まで幸せに生活できるようサポートするStiftung Valentina、ネパールで慈善活動を行うHands with Handsにも協力しているというのも温かみがある。
ベルリンの歴史を冠したトイフェルスベルク・コレクション
image by Axel Mauruszat
故郷への愛はブランド名だけでなくコレクション名にも現れている。今回レビューするモデルは、FineWatchesBerlinのファーストコレクションでもある、「TEUFELSBERG」(トイフェルスベルク)コレクションからのもの。
トイフェルスベルクはベルリンに存在する標高120mの人工の山で、「悪魔の(Teufels)山(Berg)」という意味。第二次世界大戦で生じたベルリンの瓦礫が運ばれ20年かけて生まれた山でもある。なんだか不吉な名称であるが、Wikipediaによればこの名称は近辺に「悪魔の湖/Teufelssee」という場所があることから名付けられたそう。
こちらは発送用の箱に入っていたポストカード。「DANKE」(ありがとう)の言葉と共にトイフェルスベルクの写真が印刷されている。森の中にドーム状の建築物が複数見えるこれは、トイフェスベルグの元アメリカ国家安全保障局リスニングステーション(電波を傍受して諜報活動などに利用するための施設)。建てられた当時はソ連、東ドイツ、ワルシャワ条約機構の動向を知るために今は廃墟となっており、中にはグラフィティが多く描かれているほか、ガイドツアーなどもあるようだ。
ベルリンの特別な場所や人、出来事の名前、しかし今も多くの人々に知られるものではなく、人々の記憶から薄れつつあるそれらをコレクション名にしていくというFineWatchesBerlin。ブランドにとって、そして創設者のWilfried氏にとって、このファーストコレクションの名前となったトイフェスベルグは、その名前とは裏腹に、温かい記憶に満ちた特別な場所だ。
1985年からベルリンに住みだしたWilfried氏にとってはトイフェスベルグはただ歴史が眠る場所以上の存在であったようだ。マウンテンバイクをしたり、マラソンのトレーニングをしたり。今でも一人で、また娘と共にトイフェスベルグで長い散歩を楽しむ。Wilfried氏にとってスポーツとリラクゼーションの場所であり、お孫さんたちにとってもお気に入りの場所でもあるトイフェスベルグは、「ベルリンの全てが見渡せる最も素晴らしい景色」が楽しめる場所だそうだ。
トイフェスベルグから眺めるベルリンの景色。 image by Denis Apel - CC BY-SA 2.0 de
今度ベルリンに行ったら訪れてみたいところだ。
そんなTEUFELSBERGコレクションは、バウハウス・ムーブメントからの影響を強く受け、機能主義的な美の宿る腕時計となっている。なおWilfried氏は当ブログに、JÖRG SCHAUER(*)、アラン・シルベスタイン、ノモス、XEMEX(**)、モンディーンなどのブランドからもインスパイアされたも語ってくれた。早速どんな腕時計なのか開封してみよう。
*STOWAのオーナー兼デザイナー
**スイスの腕時計ブランド
開封
開封工程は豪華だ。発送用の箱を開けると先に述べたようにトイフェスベルグのポストカードと共に、こちらが出てくる。ブランドロゴ入りの薄い包装紙が化粧箱を包んだものだ。
それを開けると厚紙のスリーブ。天面にはデボス箔押しで青く輝く「FineWatchesBerlin by W.Liefer」。
箱の組み立て工程の簡易化のためか、箱の内側面にも天面と同じくデボス箔押し加工がなされている。
スリーブをスライドさせて外すと出てくるのは竹製の豪華なボックス。天面にはレーザーでブランド名が彫り込まれている。
このボックスは手作りとのこと。蓋は小さなマグネットで留まっている。開けると出てきたのがTEUFELSBERG White #2。替えのストラップと、国際保障書も入っている。
ケース
ケースはシンプルな中にバランスの取れた美しさがある。316Lステンレススチール製で径は40.5mm、厚は11.4mm。耐水性能は5ATM。
真上から見ると「丸から上下に線が二本」という典型的な腕時計を画に描いたような形状だが、細かく考えられた形状になっているのでじっくり見ていこう。
風防はサファイアクリスタル製。風防は横から見れば台形で縁は下方向に傾斜している。それ自体は何の変哲も無いのだが、風防の縁の処理は面白い。これまで私がレビューしてきた腕時計のそのほとんどは風防縁の傾斜を利用して、ケース天面から「風防縁の傾斜」が突き出て風防天面が位置する(例えばセイコー・アルピニストSARB017などでもそうなっている)。
しかしTEUFELSBERGでは、ケース天面と風防天面との間に溝があるかのように一旦「風防縁の傾斜」の分だけ下がってから風防が突出する。(強いて言えば回転式ベゼルを持つ腕時計、例えばセイコーのSKX009とか007とかの風防とベゼルの関係に似る。)
このため、(僅かながら風防の方がケースよりも高いものの)風防がケースから出っ張る感じはしない。ケースに注意を向ければ、ラグの付け根上部あたりに溝が走ると共に、ラグの下部は非常に僅かにだが一段下がっている。これは竜頭へのアクセスを容易にする意味もあるだろう。そこから更に一段下がって裏蓋がついている。
ラグの天面は僅かに傾斜していて、各角は面取りしてある。またラグの底面の傾斜は、天面の傾斜とは僅かに異なる。ラグの外側には青色のねじがあるのも判るだろう。
こちらのアングルから見ると(写真では判りづらいが)ラグの付け根部分は溝に平行であるが、そこから手前に伸びる両ラグの天面が「八」の字状に僅かな傾斜を帯びていることも判る。
竜頭頭頂は「蛇の目」にも似た青地に白丸。少し中心がずれているのはご愛敬。このモデルはこの青い色/紺色がキーカラーとなっており、この方向から見ると、ラグ横の青ネジと共にリズムよくキーカラーが繰り返される。
この蛇の目はぷっくりと飛び出しているが、これはレジンによるもの。
側面はクルー・ド・パリ(Clous de Paris)風の凹凸がある。滑り止めとしての機能を果たしている他、各傾斜部が光を反射し、意匠としての機能も持つ。
特にケース全面が艶出し仕上げであること、そして竜頭サイズがケース径と比較して小ぶりであることもあり、この竜頭とその凹凸が作り出すテクスチャは時計全体から見ると良いアクセントになっている。
竜頭の反対側には「FineWatchesBerlin by W.Liefer」の刻印。
ケース裏面はネジ止め式で、エキシビションバックとなっている。表の風防はサファイアクリスタル製でも、裏はミネラルクリスタルで済ます有名ブランドも少なくないが、FineWatchesBerlinは裏面も手抜き無くサファイアクリスタル製だ。
ムーブメントでテンプの上に来る赤いルビーのパラショック受け石と、ケース裏蓋でその丁度外側に来る蛇の目の刻印、更に言えばローターの青ネジも同直線状にあり、これらがパターンの連続性を産んでいる。
ローターはオリジナルの中抜きローターが用いられており、中央付近にブランドイニシャルの「FWB」、そしてローター外側部分には「From Berlin With Love」(ベルリンより愛を込めて)の文字が金色で刻印されている。
ムーブメントは信頼性のおけるムーブメントとして知られるMiyota 8218。自動巻き+手巻きで、ハック機構はなし。Caliber Cornerによれば21,600 bph、21石で、パワーリザーブは42時間。Miyotaのムーブメントは自動巻き音は他社のものと比べて大きめの印象を受けるが、これもまたローターの動きは大きめ。
なお、KAMINSKY BLOGのレビューによれば、ムーブメント裏面の青ネジはすべてわざわざFineWatchesBerlinオリジナルで取り付けているものだという。インデックスの青色とも、青い蛇の目とも共鳴する要素として重要な意味を持つだろう。なおWilfried氏によれば、このワークホースムーブメントにここまでの変更を加えるのはFineWatchesBerlinを含めても世界に2社しかないという。
文字盤
各時部分はアプライドインデックスとなっており、そのさらに外周部分には蓄光の点がある。
各時インデックスバー状で、12,3,6,9はアラビア数字。数字は縦長のサンセリフフォントとなっておりエレガントだ。なお12のインデックスのみ他の数字よりも大きい。
蓄光点はぽつんと文字盤から突き出し、各時に一つ、12時部分には二つあり、暗所での識字を可能にしている。蓄光材の間には各分のインデックスが黒く短い線で記してある。
蓄光させるとこんな感じ。
時分針はぱっと見バー状だが、よく見ると先端部分は尖っているため、ペンシル針と言った方が適切だろうか。針の内部は蓄光。
4時と5時の間あたりは一段窪みがあり、スモールセカンドが位置する。スモールセカンドのインデックスもメインのインデックスと対応するように、上下左右の4箇所(15,30,45,60)が同フォントのアラビア数字、他の8箇所はバーインデックスとなっている。
スモールセカンド部分のインデックスは、黒い線とフォント。ぱっと見判りづらいが、外周と内周の円は実は青い。ここにも竜頭と共通するパターンがあるのだ。
スモールセカンド針は赤色。パターンの連続性、色の統一性のあるなかに、差し色として機能している。
(ケースを裏返して裏のムーブメントを覗くと、赤いルビーのパラショック受け石が丁度スモールセカンドに対応する位置に来るのも面白いところだ)。
スモールセカンドの窪んだ部分は特筆することのない白色だが、文字盤の大部分はエナメル・ホワイトとなっている。これはエナメルのような透明感と仄かな青みが感じられる色で、美しい。
スモールセカンドの窪みの縁ではエナメル風の光沢が見える。
12時下には立体的に銀に輝く「FWB」のイニシャルロゴ。個人的にはこの文字盤にこのロゴは似合わないと感じる。この腕時計の他の部分のデザインと異なり、「F」、「W」、「B」それぞれの文字にはそれを纏め上げるルールがなく、重なり合い方もいびつであれば傾斜角も異なる。
9時インデックスの右にはよりバランスのとれた「FineWatchesBerlin by W.Liefer」。ブランド名部分はやはり銀色で立体的。かなり細かい文字だがくっきりしている。
最外周には青い円があり、盤面を引き締めている。この円は6時あたりで途切れ、「DESIGNED IN GERMANY」とドイツでデザインされた旨が記されている。
ストラップ
ストラップはブラウンのものが付けられているが、化粧箱の中にはブラックのものも入っている。幅は20mm。
表面は艶があり僅かにシボのあるテクスチャ―。
キーカラーの紺色でストラップの左右の端が縫われている。
クイックリリース式であるため付け替えは容易だ。
表面は、どちらも時計部に近い側の片方に蛇の目、もう片面にFWBの刻印がなされている。
手首に触れる裏面は肌触りの良いヌバック。「FineWatchesBerlin by W. Lieger」
「ECHETES LEDER」(リアルレザー)、「handgearbeitet」(ハンドメイド)の刻印。個人的にはこの部分が(ありきたりな)英語ではなく、ドイツ語で記してあるというのも好きなポイントだ。
側面のコバ塗りも紺色となっている。
バックルも時計ケース部と同じく艶出し仕上げ。ここには表面端に蛇の目の刻印がありおしゃれ。
16~17cmの手首径の私では、小さい方から2番目のストラップ穴で丁度よいサイズだった。
黒いストラップではこんな感じ。
まとめ
父と娘により創設された家族経営のブランドであるというストーリー性も魅力なFineWatchesBerlinだが、肝心の腕時計も上手くデザインされている。Wilfried氏が「常にバウハウス的な、クリアなスタイルにフォーカスしてきた」と語るように、文字盤は明快。40.5mmのケースに目一杯広がったシンプルな文字盤の識時性はとても高く、腕時計としての機能性もまた高いと言えよう。
装飾性はなるべく省いた中にも、「白と青」という色彩要素、そして「蛇の目」の要素を繰り返し用いることで、反復の愉しさもある。
バウハウスからのインスピレーションもあるこの腕時計の造形美、シンプルな形状の中に宿る美は、ストラップを取り除くことで(ストラップを取り除くと「腕」時計としての機能性が失われるが)より堪能できるだろう。
購入はFineWatchesBerlin公式ウェブサイトから通常価格は698ユーロ、記事執筆時レートで約8万3000円…のところ、今回は特別に当ブログの読者限定、太っ腹に98ユーロ(約1万1700円)も割引してくれるクーポンコードを提供戴いている。コードは:
FWB98
TEUFELSBERGコレクションは、今回レビューした White #2 の他、文字盤やインデックス色違いが3モデル存在する。このほか各色限定100本ずつ、TEUFELSBERGコレクションをベースにしたビビッドな個性の光るVALENTINA RED、VALENTINA BLUEが存在する。
Image courtesy of FineWatchesBerlin
Source: FineWatchesBerlin, Wikipedia, Watch Dig, Caliber Corner, KAMINSKY BLOG
(abcxyz)
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