Collaboration with Swiss Watch Company
正真正銘のスイス・メイドのダイバーズウォッチ。しかも性能も抜かりなく、防水30ATM、ルミノバ蓄光が20層、反射防止コーティング5層、サファイアクリスタル風防、セラミックベゼル、質のいいメタルブレスレットに、通常のバックルに加えてダイバーズ・エクステンション・バックルも付いてきて…これで5万円。信じられないでしょ。でも本当なんですこれ。
という訳で今回はSwiss Watch Companyの「SWC Diver GREEN」をレビューしよう。
もくじ
・Swiss Watch Companyとは
・豪華なキャリーケースをいざ開封!
・AR5層コーティングに特徴的なセラミックベゼルのケース
・スーパールミノバ20層、緑の文字盤
・仕上げの美しいメタルブレスレットに通常バックルとダイバーズ・エクステンション・バックルも!
・まとめ:コスパも優れ、高品質でスイス製…スイスの良心ここにあり
・高品質、スイス・メイドをこの価格にできる理由は?+日本の読者へのコメント
Swiss Watch Companyとは
Swiss Watch Companyは1996年にStephen Roemer氏によって設立された、家族経営のブランドだ。
マーケティングの名の下に、社名に会社所在地とは関係ない国や地域の名前が付けられることも少なからずある。だがSwiss Watch Companyは正真正銘のスイスの腕時計ブランド。Swiss Watch Companyという社名はスイスの国家によって承認されているものなのだ。社名に「Swiss」と付けることを国が許可していた期間は過去に数年間しかなかったとのことで、スイスの腕時計会社で社名に「Swiss」と付いているものは同社しか存在しない。
スイスで生まれ育ったStephen Roemer氏は、時計のメッカとも言えるスイスのビール(Biel)で17歳より時計業界に入り活躍し、Swatchグループでオメガ、Longines、ティソ、RADO、ハミルトンなどの有名どころのために働いた経歴もある時計師だ。Swiss Watch Companyでは氏を筆頭に氏の息子達が脇を固める、昔ながらの家族経営の腕時計会社となっている。
同社は他社ブランド向けの腕時計製造OEMも請け負っており、様々なブランドへ米国海兵隊(The U.S. Marine Corps)の為に15年間ダイバーズウォッチを製造している実績もある。同社は2018年にはKickstarterでダイバーズウォッチのキャンペーンを成功させている。
豪華なキャリーケースをいざ開封!
外箱を開けると出てきたのはキャリーケース!
中心にはSwiss Watch Companyの社名とロゴが。
取っ手はフレシキブルで持ちやすくなっており、実用的だ。
開けるとこの通り!内部のスポンジ表面部は起毛加工されており、毛の一部が(セイコーSARB035の化粧箱内部とピローのレーヨン起毛のように)時計や保証書についてしまっているが、こればかりは価格帯の限界か。とは言えここまでのキャリーケースをこの価格帯で実現しているのは信じられない驚きだ。(気になる価格はレビューの最後で!)
保障カードはクレジットカードのようなしっかりしたプラスチック。レビューサンプルのため保障年数は書き込まれていなかったが、同社ウェブサイトによると保障は3年。保障カードには湾曲型スプリングバー!ストラップこそ付いていないが、普通に買うと高価な湾曲スプリングバーが付いているのはありがたい。(また、湾曲スプリングバーが付いてくると言うことは、時計ラグとケースの間の隙間は狭いということでもあろう。)
このケースは複層構造になっていて、上の層を外すと下層からは…ダイバーズ・エクステンション・バックルが!既に時計にはバックルが付いているのでこれはユーザーの好みや用途に合わせて付け替え可能なオプションとして付いてきている。
化粧箱が好みの方もおられるだろうが、化粧箱が置きっぱなしになってしまうのに対し、キャリーケースは実際に時計を持ち運ぶ際にも活用でき、実用性が高い。しかも上下層合わせて3つの時計、複数のストラップを収納できるほか、メッシュ部分にも小物が入れられるのも嬉しい。しかもメッシュ部のスライダーが時計に当たることのないよう隠れるのも細かい気配りだ。
AR5層コーティングに特徴的なセラミックベゼルのケース
こうして出てきたSwiss Watch Company、SWC Diver GREEN。316Lステンレススチール製ケースは径が44m(竜頭ねじ込み時ケース端から頭頂までは48.3)、厚みは13.2mm。同ケースサイズの一般的な腕時計と比較して、ラグからラグまでの長さが48mmと短め(42mm系のケースにはラグからラグが52mmのものが多い)。
風防はドーム型で、なんと5層もの反射防止コーティング(ARコーティング)が風防内側に施されている。ARコーティングは表裏両側に施されている場合に最も効果があるとされるが、表面に施されたコーティングは容易に削れ落ちてしまう。なのでそんなものは元からつけずに、内側のコーティングにより力を入れているわけだ。それでも、AR2層コーティング程度なら聞いたことがあるが、5層もコーティングしているのは凄い。
12角形に見える逆回転防止ベゼルは、この腕時計の見た目の大きな特徴となっている。オメガのシーマスターなどにも見られるこのベゼル形状は、円柱状のベゼルの端を均等に12箇所そぎ落とすようにして作られた形。これにより、ベゼルそのもの/ベゼルの側面にギア状の凹凸を付けることなく指でベゼルを回転しやくすなっている。
実は当初指が滑って「これちょっと回しにくいな」と感じていたのだが、それは側面がギアエッジとなっている他のダイバーズウォッチと同様に回そうとしていたからであって、窪みの形に指の腹を添わせて文字盤に対して45度くらいの角度時計中心に力を加えるようにして回転させるとスムーズに回せた。
この形状は間違って何かに触れて誤回転してしまうのを防ぐことができる。それだけでなく、「ベゼルの外側がギザギザしたいかにもなダイバーズウォッチ」と比較して、よりフォーマルな機会にも似合うスタイルとなっているのも利点と言えよう。
ベゼルインサートは円形であるが、ベゼル全体の形状が12角形であるために、インサートも角張っているような錯覚を覚える。
ベゼルインサートにはスーパールミノバ蓄光が丸くついた逆三角形。
そのほか、20、30、40、50分位置にアラビア数字インデックスがあるほか、他の10分おき位置にはバーインデックス、そして0~15分位置にはドットインデックスもある。
ベゼルインサートのインデックス以外の部分は艶消し仕上げで、インデックス間にはレコード状の溝が刻まれている。他方インデックスの天面部分は艶があり、そのコントラストが識時性を高めている。
竜頭はねじ込み式、側面にはギア状に溝が入っており、天面は艶消し加工の中に艶のあるロゴマークが浮き出る仕様。
ベゼルガードのカーブはセクシー。上のカーブと下の傾斜の形は異なり、横から見ても格好いい。
裏蓋はねじ込み式。
裏蓋には曲線を重ね合わせたパターンがシャープにくっきりと表現されている。その上には立体的に丸みを帯びた艶のあるSwiss Watch Companyの社名とロゴが。通常裏蓋の刻印はレーザーやエッチングにより施されるが、こちらは刻印よりも耐久性があり高級な油圧式プレスが用いられている。シリアルナンバーはレーザー刻印のようだ。
防水性能は30ATM、本格的な300m防水だ。しかも防水性能は腕時計一つ一つテストされているというので安心感がある。
ムーブメントはSellita SW200。26石、28,8000bph、パワーリザーブ38時間のスイス製自動巻き機械式ムーブメントだ。
スーパールミノバ20層、緑の文字盤
ベゼルインサートも緑であったが、このモデルは文字盤も緑。文字盤の緑の色合いとしては、濃い抹茶色という表現が近いか。分刻みの線と5分刻みのアラビア数字が記されるダイヤルリングは僅かに明るい緑。
時分針はソード型と呼ばれる、途中まで先の方が太く、先端は鋭角になるタイプ。長さ方向に沿って山折りとなっているので光を反射しやすい。中部分は途中ブリッジを挟んで(ブリッジも先端方向に向けて尖った形だ)中は蓄光材。
ダイバーズウォッチの中には時分針の先が四角く、尖ってないものも少なくないが、時間を正確に把握するという点ではこのような尖った先端の方が好ましい。
秒針は先端が矢尻状で、蓄光部がある。
文字盤の各時インデックス要素はダイバーズウォッチの典型とも言える逆三角形を12時に、3,6,9時に長方形、後は丸で構成されている。(グランドセイコー初のダイバーズをデザインした久保 進一郎氏のインタビューでは、国立研究開発法人 海洋研究開発機構の人によればダイビング中にヘリウム酔いなどで思考がはっきりしない中、識別できるのは、丸、三角、四角といった基本図形のみだと語られている。)
文字盤には、丸いインディクスの間に角を挟まれるようにして正方形が彫られ、正方形の中には縦方向に平行線が伸びる。
日付窓の横にもきちんと蓄光インデックスがある。
そしてこれらインデックスにはスーパールミノバ蓄光が20層も塗布されているのだ。Kickstarterキャンペーンページでは、10~20万円台の有名ブランドの類似性能のダイバーモデルと蓄光厚が比較されているが、他社製のものが0.15mm厚に対してSWC Diverの蓄光の厚みは倍の0.3mmとのこと。
まばゆい蓄光!
十分な光が当たっていれば、明かりの付いた部屋の中でも光って見える。モデルのカラーによって蓄光色も変えてあるようだが、緑のモデルはスーパールミノバC3、緑の蓄光色となっている。
(写真は最後に光を浴びてから6時間経過時に撮影したもの。これだけ時間が経過しながらもスマホカメラで写せる程度に蓄光しているのはなかなかのもの。)
フィンランドの暗い室内光の下で光を浴びての蓄光というあまり最適ではない環境でも、よく光る。当然ながら蓄光の明るさは次第に暗くなっていくものだが、最後に室内灯を浴びてから9時間後、部屋の薄明かりの中では蓄光しているのは判らなかったが、布団の中の真っ暗な状況に置けば十分識字可能に蓄光していた。
そして、今更繰り返すまでもないが「SWISS MADE」、生粋のスイス製腕時計だ。
仕上げの美しいメタルブレスレットに通常バックルとダイバーズ・エクステンション・バックルも!
22mm幅ブレスレットもこの腕時計で評価の高い点だ。
ステンレススチール製のブレスレットはソリッドな316Lステンレススチール製切り出しの3コマ式で、表面にはヘアライン仕上げと、艶出し仕上げが上品に施されている。
艶出し仕上げなのは中のコマの両サイド。中のコマは両脇よりも突出している。
側面と裏面は表面ほどの柔らかみのある反射は無いものの、ヘアライン仕上げとなっている。
コマ調節は片側からピンを押し出す方式。
Cリングタイプに似て、ピンと、真ん中のコマの中に入っているCリングからなる(Capsa pinsとも言うようだ)。セイコーSARB035もCリングタイプであったが、セイコーのCリングがとても小さく、真ん中のコマの片側に差し入れるものだったのに対し、こちらは真ん中のコマ端から端までの長さがある。Cリング、ピン共に、中央に溝状の窪みがあり、これが合わさって固定される仕組み。
Swiss Watch Companyはブレスレット調整には拘りを持っているようで、通常サイズのコマの他、半コマサイズのコマも二つついてくる。
通常のバックルはバックル両サイドをプッシュして開ける三つ折れ式。
ロゴと社名の刻印されたバックルの外側に来る面はとても小さくなっており、全体のスタイルを損なわない。
バックル開閉機構の根元部分には、安いメタルブレスレットのバックルでは見ることの無い追加の可動部が存在し、脱着感も心地よい。
(調整中だったので仮止めしているのでピンが少し出ている。)
手首径16~17cmの私の場合、この標準装備のバックルでは5.5コマ外して丁度よかった。
内側には「REGISTERED DESIGN 2018」、「STAINLESS STEEL」、「DIVER EXTENSION」と記してある。こちらはエクステンションバックルではないがここに「DIVER EXTENSION」と記してあるのは、当初このモデルに予定されていたダイバーズ・エクステンション用のバックルであったため。結局品質が期待にそぐわなかったためこのダイバーズ・エクステンションは取りやめになり、バックル部分のみが活かされているのだ。Kickstarterアップデートにその経歴が記してある。
もう一つ付いてくるのはそれを受けて新規採用されたダイバーズ・エクステンション・バックル。ダイバーズ・エクステンション・バックルは工具無しですぐにブレスレットの長さを調節できる機構のついたもの。
元の位置の状態も含めると5段階に可動し、最大で12.5mmほど延長される。こちらにはマイクロアドジャストが一つある。
エクステンション・バックルはそれ自体が48.1mmと長さを持っているため、通常バックルよりも多くのコマを外さなくてはいけない。
このバックルのマイクロアドジャストは、短い設定では隣接するバックルコマが固定されて動かないが(左写真左端部分)、長い設定にするとこのコマが回転するようになる(右写真同部)。
バックル自体は両サイドプッシュ式の三つ折れ式。
はじめは「別に潜らないからエクステンション・バックルなんて要らない」と考えていたが、肌が汗ばんできたときや手首が僅かにむくんできたとき(?)などにあると助かる機構だ。レザーストラップではそんな状況でも工具無しで簡単に長さを変えられるのに、通常のメタルブレスレットのバックルではこんなときに工具がないと微調整はできず、結局腕から外したりしないといけない。それを解決してくれるのだ。
私の場合、外せるコマは全部外して、マイクロアドジャストで長い方の設定にすると丁度よくなった。
(上が通常のバックル、下がエクステンション・バックル。内部構造の形状やカーブも異なるのが判るだろう。)
ただ問題としてはエクステンション機構自体が長いため、手首が細い人には向かないということか。日本人男性として平均的なサイズ(出典は忘れたが以前調べたところ16.5cmだったと思う)であるはずの16~17cmの私の手首でコマを全部外してようやく付けることができるのだから。また、このようなサイズギリギリでの装着は、少し見栄えが悪い。それでも汗ばむときなど便利なのでダイバーズ・エクステンション・バックルをつけて使用しているけど。
ストラップ自体は付いてこないが、付属の湾曲スプリングバーを使えばNATOストラップなどに付け替えて楽しむこともできる。写真はVARIO社のコーデュラ製パススルー式NATOを取り付けたもの(セイコー・アルピニストSARB017に色々ストラップを付ける記事でちらっと紹介したもの)。
まとめ:コスパも優れ、高品質でスイス製…スイスの良心ここにあり
一目見ただけでクオリティーの高さが伝わってくる類いの時計だ。
細かく見ていけば、ケースとブレスレットの表面仕上げの美しさ、独特なセラミック製のベゼルインサート、0.3mmのスーパールミノバ、300m防水、5層の反射防止コーティング、通常バックルにダイバーズ・エクステンション・バックルも付いてくる。これだけの品質、機能を備えながら、価格は僅かに495ドル(記事執筆時レートで約5万5000円)。しかも送料は無料だし、何度も言うけどこれはスイス・メイドなのだ*。購入はSwiss Watch Companyのウェブサイトから可能。
ゴツい見た目のダイバーズウォッチを求める人には勧めることはできないだろう。しかしユニークなダイバーズウォッチを求める人や、ダイバーズウォッチにドレッシーさを求める人には大いにお勧めできる。加えて、防水性能や暗闇での識時性などダイバーズウォッチの実用部分を求める人にとっては価格の面でもとても魅力的な選択肢だ。
特に品質と価格を照らし合わせたコストパフォーマンスの面では大手ブランドでもなかなか作ることのできないものに仕上がっていると言えるだろう。質の高い腕時計をつくり、しかしブランド名で高く売るのでなく、手頃な価格で販売するというSwiss Watch Companyの姿勢は、まさに「スイスの良心」と言うことができるだろう。
Image courtesy of Swiss Watch Company
SWC Diverコレクションは今回レビューしているグリーンモデルの他にも、在庫があるものではホワイトモデルとブルーモデルも存在する(記事執筆時点ではブルーモデルは売り切れているが、1週間程度で在庫が戻るとのこと)。このほか、SWC Diverコレクションにはクロノグラフモデルも用意されており、そちらはムーブメントにETA 7753 Valjouxが採用されている。
SWC Diverコレクションのそれ以外のモデルは再販はないとのことだが、今年内にDiverコレクションの後続コレクションとなるVersion 2がリリースされるとのこと。それだけでなく、Swiss Watch Companyは今後Diverコレクションとは大きく異なるスポーツウォッチコレクションも近日アナウンス予定。そしてドレスウォッチも現在開発の初期段階であるそうだ。
これまで1万円から30万まで様々な価格帯のマイクロブランドの腕時計をレビューしてきたが、この価格帯でこのクオリティーの高さを実現しているブランドはかなり希。今後Swiss Watch Companyが送り出すコレクションにも要注目である。
*スイス時計協会は2017年より、「腕時計におけるSwissの名称の使用を規制する法令」を改正、時計の製造コストの60%以上に当たる部分がスイスで造られねば「Swiss Made」と呼ぶことはできないという厳しいものにしている。
高品質、スイス・メイドをこの価格にできる理由は?+日本の読者へのコメント
だが一体どんなスイスの黒魔術でこの価格を実現しているのか?Swiss Watch CompanyのJosh Roemer氏に尋ねてみたところ、これは同社創設者でありJosh氏の父親であるStephen Roemer氏の経歴にあるという答えが返ってきた。
長年Swatchグループで品質管理と製造の監督を行った経歴に加え、20年間大小様々なブランドの製造に携わってきたJosh氏。そして時計業界での30年の経歴以上に、その間築き上げてきた製造業者とのかけがえのない信頼関係もある。これらの利点があってこそ実現できているクオリティーと価格であり、これが他ブランドの持ち得ないSwiss Watch Companyの大きな強みとなっている。
最後にSwiss Watch CompanyのJosh氏から、日本の読者の皆様にコメントを戴いているのでご紹介しよう。
私たちは時計業界の最善を求めている家族経営の会社です。苦労して稼いだお金に見合う価値のある、一生涯楽しむことのできる腕時計を生み出すため全力を尽くしています。腕時計コミュニティーの皆様と繋がりたいのでいつでもお気軽にお声をおかけください。「日本語でも いい」
なお最後の括弧内は原文ママ。Swiss Watch Companyでマーケティングを担当するJosh氏は日本に住んでいた経験もあり、日本語もできるのだ。Josh氏の仰るように同社に興味を持った方はSwiss Watch Companyのウェブサイトや同社のInstagramなどからコンタクトを取ってみると良いだろう。
Source: Swiss Watch Company, Kickstarter, Seiko
(abcxyz)
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