豊かな歴史に世界遺産、ショパンにキュリー夫人などでも知られる、バルト海に面するポーランド。最近では日本からの旅行先としても人気のこの国ではもう国産自動車は製造されていない。しかしかつてはFSOという自動車会社により国産車が作られていた。
今回レビューするのは、FSOの優雅な車Warszawa 200を称えて作られた腕時計。ポーランドのマイクロブランドXicorrの「Xicorr 200」だ。
なおXicorrは今回特別に5月末までXicorr 200ラインの日本向けへの送料無料キャンペーンを行ってくれるとのことなので、興味をお持ちの方はこの機会をお見逃し無く。
FSO Warszawa 200
image by Marek Argent, CC BY-SA 4.0
この腕時計は実はポーランドの自動車ブランドFSOのWarszawa 200(上写真)という自動車をモチーフにしたものだ。日本では馴染みが無いかもしれないのでまずはそこからご紹介しよう。
Wikipedia日本版によれば、Fabryka Samochodów Osobowych、略してFSOは1951年に当時のポーランド統一労働者党の政府によって作られた。ポーランドの首都ワルシャワ市内に工場が作られたFSOの記念すべき最初のモデルは、ソ連のGAZ社設計のGAZ-M20 Pobedaをライセンスしたモデル、FSO Warszawaだ。Wikipedia英語版によればFSO Warszawaは頑丈で耐久性が高かったためタクシー車として人気があったものの、車体が重いためにパワー不足そして燃費の悪さでも知られていた。
image courtesy of Xicorr
FSO Warszawaは1951年から73年まで作られており、当初はライセンス元と同じ作りのものだったが、1957年に改良モデルが作られた。当初「FSO Warszawa M20 model 57」と名付けられたこのモデルはすぐに「Warszawa 200」と改名される。このモデルは、よりエンジンがパワフルになり、配線関連の変更も行われたほか、新たなグリル、側面の変更、ウインカーの形状も変わったほか、特徴的なフードクレストマークが加わるなど、外観にも変更が加わったアップグレードモデルである。後には1962年に OHV I4エンジン採用のWarszawa 223やその後継機も出ているが、今回の腕時計のインスピレーション元となったのはこのWarszawa 200だ。
開封
まずは化粧箱の一部ではない段ボールから。化粧箱では無いがきちんとロゴと内容物の表示がある。
ロゴ入りの黒い化粧箱。通常このような化粧箱は、木製であることが多いが、実はこれ金属製!
アルミニウムに塗装し、刻印が成されている豪華仕上げだ。
スライドさせると中は柔らかな気泡ゴム製となっており、時計と内容物は柔らかく守られている。
ケース
ケースは径が42mm、厚みは11.7mm。シンプルな円柱からラグと竜頭が突き出した形状だ。
横から見るとケースが上、中、下の三層構造であること、そして中層から伸びるラグの傾斜を見ることが出来る。
ケースの材質は316Lステンレススチール。部位によって異なる方向に削り出しのヘアラインが見え、どこかしらオートモービル的な要素を思い起こさせる。
竜頭は3時と4時の間にある。竜頭の側面はグレネード状の突起がある。一方向にのみ筋の入ったコインエッジのものなどと比べ、突起が若干掴みやすいほか、それぞれの突起の面が光を反射する。このため遠目に見ても竜頭が目を惹きつけるポイントとなっている。
竜頭はねじ込み式。ねじ込みは深め。
竜頭の頭にはXicorrの頭文字であるXの記し。
image courtesy of Xicorr
これがFSOのWarszawa 200からインスパイアされた腕時計であるというコンテクストを考えれば、この左右非対称のXマークが当時のFSOのロゴ(Oの中にFとSが縦に連なり中心より水平に線が延びる)に重なって見えなくも無い。なお写真はそのロゴマークが見えるWarszawa 203。
ケース裏には美しいWarszawa 200の姿が細かく刻印されている。その下方にはブランド名とロゴ、シリアルナンバーの刻印。車を囲む円枠にはポーランド語で腕時計の性能などが記してある。これは個人的に非常に嬉しい。どの国で作られた腕時計であったとしてもこの部分の表記にはほとんどの場合自国言語が用いられることは無く、英語で記されているのだ。その方が国際的にわかりやすいという事もできるだろうし、ポーランド語が難しい言語であることも知られている。しかしこの部分に成される表記のバリエーションは非常に限られているし、結局購入時にわかるものだし、ブランドと型番が判れば簡単に調べることも、最悪Google翻訳でも解る内容。製造国の言語で書いてあった方がよっぽど面白いし、このような現状の中ではそれが大きな個性となる。
ここで見られるのは「STAL NIERDZEWNA」(ステンレススチール)、「WR 100M/10ATM」(まあこの場合WRはwater resistantの略かもしれないが)、「SZKŁO SZAFIROWE」(サファイアクリスタル)、そして誇らしげな「WYPRODUKOWANO W POLSCE」(ポーランド製)の表記。
スクリューバックとなっているケース裏、その溝部分の傾斜角度が急なため、人によっては手首で時計が動く際に軽い引っかかりを覚えることもあるかもしれない。これはストラップを緩めにして着用することで解決されるが、もし角が面取りされていればこれが根本的に解決されたのではと思う。
使用ムーブメントは信頼の日本製、自動巻き機械式で手巻きにも対応のTMI NH35Aだ。なおTMIはセイコー・グループのグループ会社。
風防は、内面に反射防止コーティングが成されたサファイアクリスタル製。
文字盤
文字盤全体は、ケース形状と相まってスピードメーターを彷彿とさせる雰囲気。
image courtesy of Xicorr
それもそのはず、インデックスのアラビア数字は、Warszawa 200のスピードメーターや車内時計に用いられていたフォントに似せられている。
スピードメーターも車内時計もアラビア数字の内側に、分刻みの印と、5分刻みのドットがあるのだが、この腕時計ではそれがアラビア数字の外側にあるダイヤルリングに記されている。
ダイヤルはダイヤルリングと、その下部にある蓄光部にサンドイッチ状に挟まれる面白い仕上げ。ダイヤルの数字部分は切り抜かれており、通常は下層に位置する白い蓄光層が見える仕組み。ダイヤルリングの印とドット、数字も蓄光。
蓄光するとこんな感じ。使用されている蓄光材はC1。
文字盤の中央部分はWarszawa 200の印象的なグリルがあしらわれている。
カレンダー窓は竜頭と同じく3時と4時の間部分に位置する。
針は時分秒針の3針。時分針はペンシル型で、中が蓄光する。秒針は黒色で、先は白。なお秒針のお尻側の形状は、Warszawa 200のフードクレストマークの形を基にしたものとなっている。
面白い点として、時計外周のケース部は円周状にヘアライン仕上げとなっているのだが、その内側の風防下部分、丁度ダイヤルリングの外側に当たる部分は鏡面仕上げ的になっており、見る方向により周囲の景色を反射する。写真によってこの部分が黒に見えたり銀に見えたりするのはそのためだ。
レビューモデルはWarszawa 200にも見られるボルドー色。深い赤色の文字盤が、黒いストラップ色と相まってヴィンテージカー的なエレガンスを産みだしている。カラーバリエーションは他にも文字盤色がより鮮やかな赤のもの、黒のもの(秒針色は赤)、そして黒とボルドーのコンビネーションのもの(こちらも秒針色は赤)と、黒と赤のコンビネーションのものがある。
ストラップ
ストラップは22mm幅、レザーとシリコンの2種が付属する。ストラップはクイックリリース式では無いが、ストラップ付け替えツールも付属するので、今そのようなツールを持っていないという方でも付け替えが可能だ。
レザーのものは厚みは実測3.9mmと分厚く、色はブラック。表面は白い糸によるスティッチ、裏面は黒糸によるスティッチだ。ストラップ穴は大きめの丸穴。
ストラップループは両方共に固定されていない(多くの腕時計ではバックルに近い側のストラップループは位置が固定されている)。はっきり見て取ることは難しいが、ストラップループの一方には「Xicorr」と型押しがなされている。
ストラップループの裏面は、ステープラーのように金属片により貫き巻き込むことで固定されている。この部分の仕上げにも様々な方法があるし、一般的な糸により繋ぐ方法と比べると耐久性がありそうにも見えなくは無いが、少々安っぽく見え無くもない。だがよく見るとこの部材もケースやバックルと同様にヘアライン仕上げとなっており、全体的な統一感はある。
Xicorr 200のバックルは個人的には好み。これまでレビューしてきた腕時計のうち、ここまでの分厚さのレザーストラップを持つもののほとんどは、バックル側面に突起した、ストラップ部よりも大きく幅を持たせた形状のものが多い。例えばパネライ・スタイルとも言われるようなそのようなバックルは、グローブなどを着用したまま腕時計のつけ外しをするには良いかもしれないが、そのような使用法をしない限りは不必要に大きく、時計重量を重くする存在である。そのようなものとは対称的にXicorr 200のバックルは必要最低限の幅かつ、厚さも適度で好ましい。
もう一つ付属するシリコンストラップ。複雑なテクスチャーの表面は、シリコンながらも白い糸でのスティッチも面白い。ストラップループも表の面には同様のテクスチャーがあしらわれている。
裏面はシリコンらしい腹筋状の切り込み。裏面側のスティッチは溝の中に綺麗に収まっている。
レザーストラップのバックルはヘアライン仕上げ、シリコンストラップのバックルは艶出し仕上げとなっている。
まとめ
image courtesy of Xicorr
ポーランドの国産自動車からインスパイアされた、ポーランド生まれの腕時計。腕時計好きならそれだけでも価値がある腕時計であろう。
価格は1399ポーランドズウォティ、記事執筆時の日本円で約4万1000円+送料となっている。国際保証も付いており、サービスポイントはポーランドのワルシャワにある(ちょっと遠いが)。
また、冒頭にも記したように今回特別に5月末まで日本へのXicorr 200ラインの送料無料キャンペーンを行っているので気になる方はこの機会をお見逃し無く。発送はポーランド郵便の国際郵送サービスを使用したものとなる。購入はXicorrのウェブサイトからどうぞ。
XicorrのAdam Tomaszewski氏から日本の読者の皆様へコメントを戴いているので最後にご紹介しよう:
私は日本のお客様にXicorr 200をご紹介する事が出来て大変嬉しく思います。このユニークなデザインと50年代のポーランドの自動車へのリファレンスを日本の皆様が気に入ってくださることを願っています。
Source: Xicorr Watches
(abcxyz)
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