Sponsored by BEHRENS ORIGINAL
月の満ち欠けを時計盤面上に表示するムーンフェイズ機構。しかしこの機構を備えた腕時計の中でも安価な物はクオーツ式だし、ぱっと見ムーンフェイズに見えてただのサン&ムーンダイヤルだったりするものもある。その上、ムーンフェイズを備えた手頃な価格帯の機械式腕時計のほとんどは、どれも似たようなものばかり…。
香港のBEHRENS ORIGINALが現在Kickstarterでキャンペーン中の「MOON PHASE」は、そんなムーンフェイズを巡る現状に一石を投じる腕時計だ。手頃な価格でユニークな巨大なムーンフェイズを持った機械式腕時計である「MOON PHASE」、ご紹介していこう。
BEHRENS ORIGINAL
15年以上の経験を持つ腕時計士、B.Q.Jack氏により2012年に創設されたBEHRENS ORIGINAL。社名の元となるのはドイツの建築家でデザイナー、ペーター・ベーレンス(Peter Behrens)だ。モダニズム運動にも関わるべーレンスのデザイン哲学を腕時計に取り入れた同社は、腕時計に常に革新をもたらし、腕時計をどれも似たような見た目にしてしまうパターンを打ち砕くことを目指す。
そしてそうするためにBEHRENS ORIGINALが注目するのは、腕時計の心臓部とも言えるムーブメントだ。腕時計を形作る中心にあるムーブメントに変化をもたらすことで革新を生むのだ。こうしてBEHRENS ORIGINALが独自にムーブメントを改造しだしたのが2012年。長い年月をかけて試行錯誤、テストなどを重ねた上でようやく姿を見せた腕時計が、今回のKickstarterキャンペーンで提供されるMOON PHASEである。
MOON PHASE
MOON PHASEの最大の特徴は、その名の通りムーンフェイズだ。大半のムーンフェイズ機構付きの時計では、ムーンフェイズ部分は小さく、また、半円状になっている物が多い。そんな中でMOON PHASEは文字盤のほぼ3分の1を使い、円形のムーンフェイズ窓を使用。月の姿がそのまま窓から見える作りになっている。なお月と星々はSuper Luminova蓄光となっている。
ムーンフェイズ機構を持った時計の多くは、月の周期を簡易的に29.5日とし、(その倍数である)59日で1周するものと成っているが、実際の月の満ち欠けは29.530...となっている。そのため実際には2ヶ月に1度は修正が必要なのだ。もちろん、ゼロを何個も付け足さないと買えないようなより高級な時計の中にはより誤差が少なくなっているものもあるが。
MOON PHASEでこれを可能にしているのはMiyota 9015にプラグインを加えたり微調整を加えるなどの改造を施して作られたBR2515ムーブメントだ。28,800bphで24石、パワーリザーブは40時間。ムーブメントに詳しい方なら「待てよ、Miyota 9015にはムーンフェイズ機構はついてないぞ?」と思われるだろう。そう、元々このムーブメントにはムーンフェイズ機構はなく、代わりに日付表示機構がついている。BEHRENS ORIGINALはこの日付表示機構に変更を加え、ムーンフェイズを表現したのだ。
そのため、このムーンフェイズ機構は通常の物とは異なり、31日で1回転する歯車に取り付けられており、毎月末に修正が必要だ。きっと純粋なムーンフェイズ機構を求める人はこれに難癖をつけるに違いない。確かにこれは純粋なムーンフェイズ機構ではなく、カレンダー機構のダイヤルをムーンフェイズ表示に流用した物だ。しかしこの単純で、なおかつ日数的にも近似的な機構をムーンフェイズ表示に用いることで、これまで目にしたことのないような巨大なムーンフェイズが可能になされている。これは、毎月の修正こそ必要だが、巨大なムーンフェイズ表示を既存の機械式ムーブメントで行うための上手いデザインの取捨選択だと言えよう。
どうしてもそのユニークなムーンフェイズに注目が集まるMOON PHASEだが、それ以外の部分にもこだわりがある。インデックスはダイヤモンド・カッティング・リフレクティブ仕上げとなっており、縦方向に非常に細い溝が刻まれている。これにより左右方向からの光をインデックスが反射するというもの。光の角度によってはクローム風のレインボーカラーが見えるそうだ。
ドームのサファイアクリスタルは、4.5mm厚のサファイアクリスタルを2.4mmのドーム状となるよう加工したもの。凄いのは、多くの時計会社がサファイアクリスタルを外注しているのに、BEHRENS ORIGINALはこの加工を社内で仕上げていることだ。同社によればサファイアクリスタルのドーム状への加工は一日最高3個分のみしかできない、とても時間とコストの掛かる作業だという。
針は時分秒針の3針仕様、リーフ状の時分針を持ち、秒針後方には社名のイニシャル「BR」型になっている。
316Lステンレススチール製のケースは、ケース径42mm、ヘアライン仕上げと鏡面仕上げを組み合わせたもの。ケースから突出したドーム状サファイアクリスタル風防とラグを含めても11.4mmと比較的薄い仕上げているのも特徴だ。竜頭はコインエッジで頭に「BR」のロゴ。裏蓋はシースルーとなっており、こちらもサファイアクリスタル製。中に見えるムーブメントのローター部分にはBEHRENS ORIGINALのロゴと共に、アラビア数字の模様が見られる。
ストラップはイタリア製のカーフレザーで、竹斑状のクロコダイル型押しが成されたもの。
カラーバリエーション
カラーバリエーションはブラックとブルーの2種類。
ブラックの文字盤は梨地仕上げであり、これもクラウドファンディングでキャンペーンされる腕時計としては珍しい仕上げ。ムーンフェイズの夜空部分も同じく梨地仕上げとなっており、統一感がある。付属ストラップはブラック。
ブルーはサンダイヤル仕上げとなっており、こちらもムーンフェイズの夜空部分は同色となっている。こちらも付属ストラップはダイヤル色に合わせられており、色は紺色となっている。
入念なテスト工程
さらに、ムーブメントに調整が加えられ、日差が-20~+20秒になるよう7日間をかけたテストが同社によりなされるというのも特徴の一つだ。ムーブメントは完全にゼンマイを巻いた状態で、竜頭を左、竜頭を上、竜頭を下、ダイヤルを上、ダイヤルを下向き、の5つのポジションでテストがなされる。その後24時間の間を置いてから再度5つのポジションでテスト。3日目には全てのパーツを組み上げた状態で自動巻上機に1日かけ、再度5ポジションでのテスト。5日目にも巻上機に書けて、再度5ポジションテスト。7日目にも完全に巻き上げられて5ポジションテストが行われ、それから時計はパッケージに入れられる。
大抵の会社は3ポジションのみでテストするというから、その分時間をかけてきちんとテストされるというわけだ。特にBEHRENS ORIGINALはムーブメント自体を改造しているので、特にこのように念を入れてテストを行うことは重要だと考えている。
まとめ
見た目だけムーンフェイズっぽい時計が欲しい人はサン・ムーンダイヤルの付いた腕時計を買えば良い。ムーンフェイズだけ欲しい人はクオーツの安価な腕時計を買えば良い。確かに真のムーンフェイズ機構ではないかもしれないが、毎月一度1.5日のずれを修正する手間をかけるだけで、高価なムーンフェイズウォッチも持ち得ないほどに大きな月が、日々その姿を変えてゆく様を楽しめる。
それに、これを近似的ムーンフェイズ機構だと言うのであれば、29.5日を基準としたムーンフェイズ機構だって所詮は近似的な機構だし、そもそも腕に原子時計でもはめていない限りはどんな時計だって近似的な時間しか示すことができない(まあ電波時計でもいいだろうが)。そして機械式時計で言えばZenithのDefy Labだって日差0.3秒もある。そう考えると、近似という手段を使って、カレンダー機構でムーンフェイズ表示を可能にしたBEHRENS ORIGINALは評価されるべきだろう。
ムーンフェイズで機械式、となるとやはり大半の時計は15万円は下らない。そんな中で、ムーンフェイズ機構の近似性を妥協と言うこともできるだろうが、だからこそこれまでないほどの大きな月を表すことができたし、そしてだからこそこれが比較的安価に提供できるのである。ムーンフェイズだけではなく細かくこだわったインデックスや、念入りのテストがなされ、2年の保証も付いて予想一般販売価格は6880HKD(約9万8000円)は納得の値段だろう。
Kickstarterキャンペーンでは更に50%近い値引きがなされ、5万円を下回る価格でリワードが提供されている。キャンペーンは資金調達締め切りまで20日以上を残し、既に目標金額の550%を超える金額を集めている。
Image courtesy of BEHRENS ORIGINAL
Source: BEHRENS ORIGINAL, Kickstarter
(abcxyz)
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