クッション型ケースが特徴的。スペイン生まれのヴィンテージスタイルダイバーズウォッチTempore Lux「V One Classic」提供レビュー


無骨ながらもエレガント、そしてちまたに溢れるものとはひと味違う70年代のダイバーズウォッチに、現代のデザインテイストを入れ込んで、高品質かつ手頃な価格で提供することを目指したTempore Lux。同社が現在Kickstarterで出資を募るV OneコレクションからV One Classic 3のプロトタイプを提供戴いたのでレビューしていく。

*なお、後述するがこれはあくまでもプロトタイプなので実際の製品版とは多少違う部分もあることにご注意されたし。


Tempore Lux



時計を愛するDavid Ramirez氏により2016年に作られたTempore Lux社は、ウォッチメイキングの黄金時代への回帰と共に、そこに現代的なデザインの最良部を組み合わせることをモットーにしたスペインの新興腕時計会社だ。

Ramirez氏は筆者に対し、日本のSEIKO製の時計のファンであるとも語っており、今回のV OneシリーズのインスピレーションはSEIKOやその70年代の時計の数々にあるともしている。

現在行われているKickstarterキャンペーンでは、今回レビューするV One Classicが盤面とベゼルの色違いが計3種類にそれぞれメッシュとレザーによるバンド違いがあり計6種がリワードとして存在する。このほかにも、ベゼル、ケース、バンドが黒い「V One Black」が盤面カラー違い3種xバンド違いで計6種。そして高級感溢れる「V One Exclusive」はベゼル、ケース、バンドがゴールドとローズゴールドの2種xバンド違いで計4種存在する。


V One Classic


早速V OneコレクションからV One Classic 3のプロトタイプを見ていこう。


まずは箱から。黒くしっかりした高級感あるケースだ。


黒い箱を開けると、オレンジの縁取りの中に鎮座するのはV One Classic。


時計のケースの説明に入る前に、このプロトタイプと製品版の違いを述べておこう。

製品版のV Oneではムーブメントが自動巻きのSEIKO NH35AとSELLITA SW200から選べるようになっている。一方こちらのプロトタイプ版はあくまでもプロトタイプなのでクオーツのRonda 515が用いられている。また、製品版ではベゼルがセラミック製となるが、このプロトタイプ版ではアルミニウム製だ。また、裏蓋も製品版とは刻印が異なっている。それ以外の点は製品版と同じだ。


ケース



やはり最も特徴的なのは316Lスチール製のケース形状だろう。丸い風防をベゼルが囲み、中程が膨らみ端に行くほど緩いカーブを描いた正方形に近いクッション型。


横から見るとケースのクッション型部分も上下でカーブの度合いが違うことがわかるだろう。ケース径は44mm(竜頭を含めると47mm)、厚みは13mmだ。


裏蓋は円を描くようにヘアライン仕上げがされているのがよくわかる(*先にも述べたがここに印された刻印は最終盤と違う)。裏蓋は中央部分は平らだが、端に行くに従い滑らかに上方にカーブしており、6箇所にビス留めされている。このカーブにより腕への接着面はケース径と比較して小さくなっており、クッション型部分の下部のカーブと合わさり、(例えば先日レビューしたほぼ同サイズのケース径をもつAVI-8 Hawker Hunterと比較して)熱なり汗なりがこもりづらくなっているし、竜頭は突出しているものの、傾斜のおかげで手首も動かしやすい。


頭にロゴが彫り込まれ、側面はコインエッジ仕上げの竜頭はダイバーズウォッチではねじ込み式。ベルトとケースとを繋ぐ取り付け部(ラグ)は腕の形に沿うように下方向に傾斜している。


一般的な腕時計ではただ竜頭を引っ張り上げて時刻・日付調整を行うが、これはまず竜頭を回すことで初めて竜頭が跳ね上がり、その状態から更に引き上げて時刻、もう一段引き上げて日付調整を行う仕組み(写真は竜頭が跳ね上がり調整可能となった状態)。これにより、何かに竜頭が引っかかり知らないうちに時刻が止まってしまったり、内部に水が入ってしまうことを防ぐのだ。ダイバーズウォッチじゃない時計にもこの機構がついていれば良いのにね。


ベゼルは逆回転防止ベゼルとなっており、心地よいクリック感と音を立ててしっかりと回転する。ベゼルは30秒刻みで回すことが出来、カチ、カチ、と2回動かすことでインデックスの1分ぶん移動する。ベゼル面には5分刻みで印がつけられ、15,30,45の位置に数字があり、12時位置には下向き三角形の印しがある。

三角形の印を現在の分針が指す位置に合わせることで、それを目安に60分以内の時間経過を計測することができる。ダイビングをしない方にとっても便利な機能だ。逆時計回りに回せるが、時計回りには回すことができない逆回転防止式なので、下手にベゼルに触れてしまっても計測時間が60分以下にはなれど、それ以上にはならないのは潜水時間や残り酸素量などを知る必要のあるダイバーズウォッチならではの機能だ。


盤面



傷がつきづらく高価なサファイアクリスタル製の風防の下に覗く文字盤面は光沢のない青色。時分秒針と日付窓がついており、印されている文字は日付窓の文字が黒であるのを除けば全て白で統一されている。

盤面には社名Tempore Luxとそのロゴ、そして「WATER RESISTANT 300 M / 30 ATM」、「SWISS MOVT」の表記が。


インデックスは5分おきにスーパールミノバ蓄光の丸が位置するほか、3時以外の位置には1から12までの文字にスーパールミノバが。中でも12,6,9の数字は他より大きく、(写真ではわかりづらいかも知れないが)数字が立体的にモッコリと盛り上がった形に。


時分針はペンシル型でどちらにもスーパールミノバが、秒針は細く伸び、途中に円形にスーパールミノバが塗られている。暗闇での可視性もバッチリだ。(*なお、ベゼル部分のインデックスが発光していないのはプロトタイプ版だから。ベゼルがセラミック製の製品版ではベゼル上の数字やインデックスももちろん蓄光する!)


真っ暗ではなくとも、薄暗い状況でも光ってくれるので見やすい。


ムーブメント





今回のサンプルはムーブメントがクオーツのRonda 515となっていると言うことは先にも記したが、製品版は自動巻きの「SEIKO NH35A」か「SELLITA SW200」の間で選択可能となっている。

面白いのは、当初キャンペーン開始時には通常版Classicとブラック版のV OneシリーズにはSEIKO NH35Aを、そして特別版のExclusiveではより値段の高いSELLITA SW200が使用される予定であった。しかし出資者からの声を受け、V OneシリーズのClassicとBlackでもSELLITA SW200ムーブメントが選択可能になった(もちろんその場合金額は高くなる)。

このような出資者の声を受けた製品詳細の変更、出資者とクリエイターがともに製品を作り上げる感じは、ある意味クラウドファンディングの醍醐味でもある。スイスと日本。どちらも時計ムーブメント制作において世界に名の知られた2国。「やはりスイス製が」、「いやいや日本製が」、と時計好きの中でも声が別れるところであり、好みのケースに好みのムーブメントが選べるようになったのは時計ファンにとっては嬉しいところだろう。

なおCaliber Cornerによれば、SEIKO NH35Aは振動数が21,600 bph、24石でパワーリザーブは41時間。同じくCaliber Cornerによれば、SELLITA SW200は振動数は28,800 bph、26石で、パワーリザーブは38時間となっている。



バンド



今回のレビューユニットはイタリア製のレザーバンドがついたもの。このほかにもメッシュ製のバンドとなったモデルも用意されている。バンド幅は24mm。


バックルには社名の刻印。またバックルがついている側のレザー裏面にも社名が刻印されている。


もう一方の側にはロゴの刻印。クイックリリース式のバンドとなっているので好きなバンドへの交換も容易だ。

レザーは水の影響により変化しやすい素材であるので、時計自体に耐水性があってもレザーバンドと共に潜水などはしない方がよいだろう(潜水用途にはゴムや金属のバンドがよいとされる)。

その一方で、普段使いのダイバーズウォッチとしては、レザーバンドは持って来いだ。ステンレススチール製の金属的なケースにレザーバンドの醸し出す自然感が合わさる美しさが楽しめる。


まとめ



最近のダイバーズウォッチはただどれも見た目が似通い、細かい部分を見れば違いは見えても、遠目に見ればまるで互いが互いを真似し合っているかのような味気ないものが多い。

そんな中にあってTempore LuxのV Oneコレクションはダイバーズウォッチとしての基本は抑えながら、一目で他とは違うヴィンテージ風味を混ぜ入れた新たな姿を造り上げた。クッション型の美しいケースは独特のフォルムを作り出しており、遠くから見ても、「おや、これは最近見ないユニークなダイバーズウォッチだな」と認識できる点が素晴らしい。


それに加えて、ダイバーズウォッチの多くが文字盤のに大きめの丸やバー状のインデックスで各時刻を示し、数字による表記をしていない印象を受けるが、V Oneでは3時以外の時刻全てにスーパールミノバ蓄光の数字が書かれているのもV Oneコレクションを他の多くのダイバーズウォッチから際立たせる特徴となっている。

ダイバーズウォッチは好きだが他の人と同じでは面白くないという人にも、ユニークなクッション型ケースが気に入ったという人にもおすすめできるし、ダイバーズウォッチとしてお手頃な価格である点や、内部のムーブメントが選択できるという点は時計コレクターにとっても魅力的な時計だろう。今後のTempore Lux社の活躍にも期待したい。



最後にこの場をお借りして、今回レビューする機会を与えてくれたTempore Luxとその創設者のDavid Ramirez氏に感謝したい。


Source: Tempore Lux, Kickstarter

(abcxyz)

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