マカロン大統領も御用達、フランスの腕時計ブランドMarch LA.Bより、モダンなのにどこか懐かしい「Seventy Three」提供レビュー


March LA.B(マーチエルエービー)はフランスに2010年に生まれたラグジュアリー時計ブランドだ。日本ではまだ馴染みがないかもしれないが、フランスではなんとエマニュエル・マクロン大統領もMarch LA.Bの時計を身につけているほどのブランドである。

そのスタイルはLAのモダンさと、フランスの伝統とも言えるディテールへのこだわりの融合。クラシカルかつタイムレスな優雅さを持ったコレクションは、他とは違う輝きを放つ。

今回はMarch LA.Bの「Seventy」コレクションから、同社のアイコニックな緑色が美しい「Seventy Three」を提供戴いたのでレビューさせていただこう。





Seventy Three



美しい緑で構成された箱を開けて…


まずは外観から。36mm幅の銀色に光を反射する筐体に、同色の針とアワーマーク、そしてMarch LA.Bのロゴが輝く。文字盤は深い緑のサンレイ仕上げ。


時針、分針、秒針の三針に加え、日付表示窓がついている。時針分針は蓄光。後述するが、日付窓には1ヶ月に一度だけ見られるちょっとした秘密もある。


風防はミネラルクリスタル製。ケースのダイアル部分よりも僅かに急な傾斜を描き上面に突き出した形をしており、風防の平らな部分と斜めになった部分とで度違いのレンズのように文字盤がずれ見えるのも美しいデザインだ。


サンレイ仕上げと一概に言っても実際には様々なものがある。Seventy Threeは緑の色が深いため、そして風防の傾斜のため、同ケースサイズのサンレイ仕上げ腕時計と比較して、直接文字盤に入り込む光が少ない。そのため、直接文字盤に当たる光量が少なければサンレイ仕上げであることはおろか、文字盤が緑であることも気づかないであろう。ともすれば光りすぎて嫌みな印象を与えかねないサンレイ仕上げに品格を与えているとも言えるだろう。


日付窓は背景が黒で文字が白。窓周囲は細く白い線で枠取られているが、窓の開口部断面も黒く、日付の黒い背景が文字盤の濃い緑に統一感を与えている。


側面にコインエッジの入った竜頭、その頭にはMarch LA.Bのロゴが彫り込まれている。竜頭が4時の位置にあるのはMarch LA.Bブランドの腕時計の特徴だ。同社のAgenda、MONTPENSIERなどを除くほぼ全てのコレクションはこの4時位置に竜頭があり、3時位置に竜頭のある典型的な腕時計とは違う存在感をアピールしている。


こうして横から見ると36mm幅の腕時計にしては分厚いと思われるかもしれない。確かに測ってみると12mmほどありケース幅と比較して分厚いが、実はこの時計100m防水仕様にもなっているのだ。


裏蓋には大きくMarch LA.Bのロゴ、モデル名に防水性能、そして同社の社名の「LA.B」の頭文字ともなっていると共にヘッドクオーターの位置する「Los Angeles / Biarritz」2都市の刻印が。

使用するムーブメントはMIYOTA 2115。Miyotaによればこのムーブメントのバッテリーは3年持つとされる。また、スマートICにより衝撃を感知すると共に、衝撃により秒針が飛ぶのを防ぐ「Shock Detection」もついたクオーツムーブメントだ。



バンド:パーロン



Seventyコレクションの時計を購入する際にはバンドをメッシュ、パーロン、ブレスレットの三種から選択できるようになっているほか、替えのストラップも販売されている。バンド幅は20mm。Seventyに付属するバネ棒(スプリングバー)はクイックリリース式とはなっていないが、バネ棒外しを使うことで簡単に外し付け替えることが可能だ。


こちらはパーロン。ケースの分厚さとは対称的に、パーロンバンドの分厚さは1m強。レトロでフォーマルな雰囲気の漂うケースとモダンでカジュアルなパーロンの組み合わせが新鮮だ。


一見すると茶色一色に見えるかも知れないが、実は黒い繊維と共に編み込まれており、どことなく和風を思わせる細かい縞模様を形作っている。着物ともよく似合いそうだ。


パーロンなのでバンドの長さを細かく微調整できるのも特徴だ。バックルにもMarch LA.Bのロゴが刻印されている。



バンド:ブレスレット



今回のレビューではキャメル色のパーロンに加えて、ステンレス製ブレスレット式の「Bracelet Expantion」バンドもつけて戴いたのでご紹介していこう。ステンレス製のメタリックな細い板が隙間なく繋がった形状の所謂「エバータイプ」(蛇腹バンドとも)のバンドは、Seventy Threeのケースともマッチし全体的な統一感をだしている。


どことなく懐かしさの溢れるエバータイプのバンドは、まさに70年代っぽいSeventyにもしっくりくる。また、フォーマルな状況にも十分適しているだろう。


なんだかこの時代からすればレトロフューチャーな雰囲気すら醸すこのブレスレットバンドは、金属製の部品が可動することにより広がる仕組み。なのでバックルもなければベルトを開け閉めする必要もなく、片手でも簡単にはめることができる。


長さ調整のためにはパーツを留めているUの字状の部品を外すためにストラップ側面のツメを曲げ起こしてやらないといけないので、苦手な人は時計専門店に持って行くべきだろう。多くのエバータイプのストラップでは、自分でツメを起こし長さ調整しても、ツメを元に戻したときに完全に綺麗に戻らないものが多く、側面の統一感が損なわれるものもある。だが、こちらのものは長さ調整にいじらないといけないツメの位置が着用時に見えづらくなっているので、やり方さえ知っていれば自分で調節する際にも見た目を損なうことなく調整可能であることは、細かいことながら重要な点だ。



グリーンライン


March LA.Bの特色として、このは、「3」という数字と「緑」が挙げられる。数字の3は創設者であるAlain Marhic氏の一番好きな月「3月」を代表する(彼とその兄弟、父も3月生まれ)。そして緑色は「生」、「命」を代表している。


この二つの要素はブランドのシグニチャーとして各所に現れている。例えば、日付は「3」のみ、3の数字が緑色になっているのだ。このほかにも、自動巻きモデルの裏蓋はグリーンのスケルトン仕様となっているし、今回レビューしたSeventyコレクションのThree(3)も緑の文字盤だ。

March LA.Bは社会意識を持った会社であり、この生命のシンボルであるグリーンラインはただブランドを代表するだけの要素ではない。同社は社会から目が背けられがちな自殺問題に向き合い、自殺予防活動に取り組む団体にこの収益の1%を寄付することで、これを体現しているのだ。



関連モデル



Image: March LA.B

今回レビューしたSeventyコレクションの上位版とも言うべきより上質な「AM69」コレクションについても少しご紹介しておこう。そちらはケースの形状はSeventyに似て、幅も36mm、同じく100m防水仕様であるものの、竜頭側面にはより複雑な模様が入り、文字盤のデザインも少々異なる。そしてAM69は「Made in France」でもあるのだ。

このコレクションにはMIYOTA 9015をムーブメントに採用した自動巻き版「AM69 Automatic」と、RONDA 517採用のクオーツ版「AM69 Electric」が存在する。より高価なAM69 Automaticの方は風防にはサファイアクリスタルを採用しているほか、裏蓋はグリーンのスケルトン仕様となっている。



フランス製の時計を身につけることは、フランスの大統領にとっても意味あること。マクロン大統領が着用するのもこのAM69 Electricだ。

今回レビューしたSeventyコレクションのThreeだが、これはもちろん'73年という意味だし、AM69も'69年を示している。March LA.Bの他のコレクションも「AM59」や「Sixty」など、それぞれ1900年代の過ぎ去りし(…でも手を伸ばせばまだ届きそうな)時代をイメージした名前がつけられたコレクションが存在する。



まとめ



派手な装飾を排し、品があり実用的。Seventy Threeは「上品でクラシカル」という全体的な統一感も保ちながらも、竜頭の位置や一月に1度のみ現れる日付の緑など、その他大勢に埋もれぬブランドとして確立したカタチが入れ込まれた美しい腕時計だ。


今もケースが大きな腕時計が幅をきかせる中、36mmという小ぶりな大きさであることもクラシカルさの象徴だ。この必要十分な機能と必要以上の大きさを求めないという点においても、次世代にも伝えることのできるタイムレスなスタイルを目指したMarch LA.Bのデザインの方向性が忠実に現れている。(なお、SeventyやAM69と共通したスタイルではよりケースの小さい32mmの「Sixty」コレクションも存在する。)

March LA.Bの日本総輸入代理店はビヨンクール(Beyond Cool)となっており、札幌、東京、名古屋、大阪、熊本に実店舗を持つ同社のHºM'S" WatchStoreやそのオンラインストアから購入することが可能である。


最後に、この場をお借りして今回レビューする機会を与えてくれたMarch LA.Bと創業者のAlain Marhic氏に感謝したい。

(abcxyz)

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