Kickstarterプロジェクト「Rollgut: Bring your thoughts to roll」。「丸める」ことにより、最小限の大きさで紙と筆記用具を持ち運ぶことができるそのデザインの素晴らしさについては先日ご紹介した記事でお読み戴きたい。今回の記事はRollgut社創設者のThomas Sommer氏がレビュー用にとRollgutのプロトタイプを送ってくれたので、そちらを実際に使用したレビューだ。
Rollgut
Sommer氏によれば、こちらのRollgutはプロトタイプの中でも初めに作られたもののひとつで、すでに1年近く使い込まれたもの。外側の素材はセルロースから作られたヴィーガン・レザーだ。他にプロトタイプとしての注意点としては、このプロトタイプに使用されている木材は実際に製品に使われるものとは違うと言うこと。
おしゃれに封蝋した箱に入って送られてきた。封蝋格好いい。
実際に手にしてみると、プロジェクトページでは気づかなかったディテールが見えてくる。
私が以前書いた内容にも間違いがあったので訂正したい。以前の記事で「巻いた側に爪のように差し込む」ことでRollgutを巻き閉じると書いていたが、正しくはゴムの先についた留め金の部分が金属製の棒状となっており、それをゴムの根元の生地側についた爪に引っかけることで閉じるようになっている。ゴムの張力でこの金属の棒が爪部分に引っかかっており、これを親指でスライドさせることで開くようになっている。
私は鉛筆ではなくペンで描くことが多く、ペンも変わったものや少々太めのものを使うのだが、それでもこれらの4本を入れて巻き取ることが可能だった。このペンケース部分のスライド式のスリーブは、Rollgutを開いたときにペンが飛び出ないようにするという重要な機能を持っている。スライド式のスリーブも金属製で美しいのだが、ペンをギリギリまで詰めてスリーブをスライドさせるとこすれ合うことがあった。これはペンの材質にもよるだろうし、スリーブは必要なければスライドさせて完全に取り外すことも可能だ。なお、ペンが完全に入りきらなくても(例えばペンクリップ部分がはみ出しても)巻けてしまうのも素晴らしいところ。
内部には磁石が
コピー用紙程度の分厚さの紙が6枚入った状態で、布の敷かれたテーブル上で絵を描いてみたが、十分に普段の環境と変わらず描くことができた。普段はFoldermate(110gsm。gsmはgram per meter、メートルあたりのグラム数)やCansonなどのA5サイズのスケッチブックにそのまま(下敷きなどは使わず)描いている。特にペンが沈むことも無かった。もちろん、(私の場合は普段の環境でもそうなのだが)下敷きを使っていないためにあまり力強く描くと下の紙に跡がついてしまう。
今日の手持ちのCansonのスケッチブックは紙が少し分厚めで、「120g/m2(平方メートル) 73.7 lb」のもの。この紙を6枚挟んでみたのがこの写真、前述の「コピー用紙程度の厚さの紙」とは違うもので、そちらと比べると大分分厚い感じだ。分厚い紙を入れるとその分描くときにもしっかりする。
ちなみに、Rollgutに挟める紙の枚数はこの紙の分厚さ/重さによる。Sommer氏はその計算のための公式も教えてくれた。
With the formula:
maximum sheets = 4000 / weight of paper per qm
You come up to:
4000 / 160g/qm = 25 sheets
この例では160gsmで計算して、25枚挟めるという答えに。上記Cansonの120gsmだと33枚、Foldermateの110gsmだと36枚まで挟める計算だ。なお、普通のコピー用紙は60から80gsmなので66枚から50枚挟めることになる。このことからはRollgut公式による「50枚まで挟める」という計算は80gsmの紙の場合と言うことがわかる。
Rollgut側面のブランドロゴ「R」が彫られた部分の中心がクリップのボタンとなっており、これを押すとクリップが開く。数枚の紙だけ入れるときには問題無いが、クリップはあまり大きく開くことはないので、紙を入れ込むときにはボタンを押してクリップを開きつつ、他の指でクリップを広げて紙を差し入れる感じだった。
クリップはバネで閉じられている。紙をクリップする部分は波状となっており、優しく紙を挟み込む。
一番下に挟んだ紙の裏側に挟まれた跡がつくのだが、ほとんど見えない程度。
入れ替え式のリングノートであればリングを通す穴を開けなければ使えないが、これならどんな紙であってもA5サイズであれば挟める。必要事項をメモした紙を挟むこともできる。私はツアーガイドをすることもあるのだが、ツアーに関するメモや地図、チケットなどをRollgutの中に巻き入れても便利だと思った。ツアーに応じて「デザインツアーだからデザインに関するメモを挟む」とか、「建物の建築家と建築年をメモした紙を挟もう」とか日によって入れ替えて使うのだ。
手紙と封筒、切手とペンを入れて旅行に持って行って、旅先から家族や友達に手紙を書くなんて使い方も良いだろう。A4の紙だって半分に折れば入れることができるし、前の記事に書いたように裏が白紙の紙/スクラッチペーパーを入れるのも良いだろう。
巻かれた紙は、もちろん巻き癖がついてしまう。しかしこれは、Rollgutを展開した状態では、ロールカバーのクリップでは無い側の端を、カバーの隅に挟み込むことで解決している。カバー生地の自重で開いた状態を保てるのだ。
この巻き癖はもちろんRollgutから紙を取り出したときにもついた状態になるのだが(写真左)、「Rollgutの外側をテーブルの縁に当てて2回引く」と紙がまっすぐになるとSommer氏はプロジェクトページコメント欄に記している。確かにそうすることで巻き癖は大分解消されるが(写真右)、完全に無くならせるのは難しい。
どちらの写真も右に写るのはFoldermateに20枚紙が入り、リング部分にペンを一本刺したもの。左はRollgutにFoldermateから取り外した紙を20枚入れ込み、4本のペンも中に収納したものだ。
注意として、分厚い紙をたくさん巻く場合は、上の写真のように隅の三角コーナー部分に紙を入れないこと。20枚入れて最後まで巻こうとすると、このコーナー部分に紙がつっかえて、上の5枚に皺が寄ってしまった。コーナーに紙を入れずに巻けば、皺を付けることなくFoldermateの110gsmを20枚巻くことができる。
Sommer氏によれば、Rollgutの唯一の弱点は、空中ではこれを扱いづらいということ。確かに、通常のクリップボードであればテーブルが無いところでも片手で持ってメモを取ることができる。しかし、実際の世界は、テーブル、壁、床、カバン、スマホなど、平らな面に溢れている。
(写真はバスの窓を下敷きにしているところ)
Rollgutのデザインの取捨選択の過程を紹介する公式サイトのページ言われているように、本、ラップトップ、そして「自分の膝」だって立派な下敷きになる。このように下敷きの機能をRollgutに含める代わりに、周りのありふれたもので代用させるという選択は、もちろんRollgutという製品から多機能を削ったかもしれない。しかしその代わりに得た軽量さと携帯性の良さこそがこの製品の本質であり、利点だ。(ジャンルが違う物ではあるが、例えばPeak Designのバックパックは軽量さを犠牲に多機能製が詰め込まれている。)
なお、Rollgutの公式ウェブサイトには開発までのデザインの過程も公開されているのでデザインに興味のある方は見てみると面白いだろう。
なおヴィーガン・レザーは引っ張ってもなかなか形は変わらず、爪でひっかいても跡は残らず、撥水性もある。環境に優しく面白い素材だ。
終わりに
(ヘルシンキのレストランBelgeでRollgutを開き、客の絵を描くところ。牡蠣を食べに来たわけでは無いのだが、レストランが「simpukka viikko(shellfish week)」をしているとかで3種類の牡蠣のテイスティングを無料でサービスしてくれた。)
*繰り返しになるが、今回レビューしているものはプロトタイプ品であり、使用されている木材が異なる他、製品版と細かい部分が多少異なる部分もあるかもしれない、ということに留意戴きたい。
一日ちょっとRollgutを使ってみて思ったのは、やはりこれは便利だと言うこと。
全く巻き癖のついていない真っさらで完璧な紙に絵や文字を書かなくてはいけないという人には、Rollgutは向いていないであろう。なぜって、そのためにデザインされたものではないから。だが、あなたが私みたいに、いつでも、どこでも、思いついたときに、頭に浮かんだ考えを文字や絵で表現したいと言う人には、このコンパクトな筆記用具は欠かすことのできないものとなるだろう。
Kickstarterでは期日を18日残し43%の資金が集まっている。
最後にレビュー用にRollgutのプロトタイプを送ってくれたThomas Sommer氏に感謝を述べたい。
(abcxyz)
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