本当のエコを考える:1「LEDと反射素材」から始まる御託

このブログでは、原発反対の視点から、節電、そしてエコについて考えてみようと思う。ただ、自分ではろくに調べもせず、専門知識もない中で、読むものに問題を提起する方向で行こうと思う。うん、我ながら無責任だと思う。だが、「世の中の大勢」は「エコのプロ」ではない。そんな「非エコプロ」の一人である私の視点から見た、エコについて書くシリーズ『本当のエコを考える』。初回の今回は、LEDと反射素材の話を書いてみた。


All Aboutによれば、LEDは白熱球や蛍光灯よりも消費電力が少ないらしい。

そんでもって、ギズモード・ジャパンにこんな記事が載っていた:「たった1個のLEDでここまで明るい 反射を利用した賢い照明」。実際には12個のLEDで壁一面を照らすというモノのようで、ウリはLEDの光を反射する素材だ。だが、これが本当にエコにつながるのだろうか?考えてみよう。

もし、これに12個のLEDと反射素材を使うのではなく、例えば反射素材なしで同じ規模の明るさを作り出した場合、どちらがよりエコだろうか?

壁を照らす必要のある者にとっては、反射素材と12個のLEDとその電気代、それと反射素材なしで同規模の明るさを作り出すLEDの購入個数と電気代と、それを天秤にかければいい話なんだろう。だが、そこだけしか見ていても本当のエコは見えてこないはずだ。

反射素材を作るのに使われる素材や、加工にかかるエネルギーすべてをひっくるめて、同規模の明るさを作り出すLEDとその消費するエネルギーを比較すべきではないだろうか。


記事内には反射素材が何で作られているのかは書かれていないようだ。だが、これがもしアルミニウムでできていたらどうだろうか?アルミニウムは、精製時に多くの電力を消費することで知られている。こちらの「教えて!goo」内の情報を信じるならば、「アルミ缶12グラムを精製するには180Wh」時間あたり180Wの電気が消費される(つまり1円玉1個分のアルミ精製には15Wh使われているということか)。

例えば、1キログラムのアルミを反射板として使えば、精製だけで15000Whの電気が消費されたということか(これってでも精製に1時間かかったら15000Wってことで、30分ならその半分、15分なら4分の1なわけだよな)。日経/トステムのサイト「ecomom」の記事によれば1キログラムのアルミを原料のボーキサイトから作り出すのに「一般家庭の消費電力量」である「1日分(15.2kwh)」必要だという(これってつまり、一日分が15.2kWってこと?それとも15.2kWh x 24hで364.8kWってこと?自分初等教育やり直さないかんな)。

さて、こちらのNECライティング株式会社の製品「AlLine」を見てみよう。製品名からも察しが付くように、この製品にはアルミを反射板として使用している。この製品は、反射率94%なんだそうで、従来のもの(反射率79%)と比べ、47%の「省エネとCO2排出削減が実現できます」なんだそうだ。図を見る限りでは、これまで2本の蛍光灯を使っていたところが1本で済むためにそれが実現されるようだ。


ここは無知を承知で適当な例えを書かせてもらう:

LED電球一つが8Wh電気を使うとすれば、12個で96Wh。26時間つければ、LEDの電気消費が2496W+反射板分(1キログラム、15000Whで1時間かかったとして)の15000Wで17496W。40時間使えば3840W + 15000Wで18840Wとなる。

もし同程度の明かりを取るために6倍(ここかなり適当)のLEDが要るとすれば72個で576Wh。26時間使えば15000Wで、ようやくここで反射板分の電気消費に追いつく形だ。だが40時間つければ23040Wと、この時点ではもうすでに反射板+LEDよりも消費電力が大きくなる。長く使えば使うほど、反射板を使用した場合のほうが省電力となる、というわけだ。


おお、省電力、省エネじゃないか。と思うかもしれない。だが、果たして本当にそうだろうか?


まず、1キログラムあたり15000Whというのはあくまでもアルミの精製の段階での電力消費である。日本アルミニウム協会のサイトによれば、新地金(原料のボーキサイトから新たに生成されたアルミ)の国内生産は5千トン、輸入は1958千トン、再生される地金は国内生産1058千トン、輸入が755千トンとなっている(*ちなみに、「商品先物入門教室」によればアルミニウムを再生する際に必要な電力は、新たに生産する場合の3%ですむとのこと)。つまり、海外での生産が多い。海外で多くの電力を消費して作られたものが、日本に運ばれてくる過程では、またエネルギーが消費される。そして、加工が国外か国内どちらで行われるかは知らないが、加工にも電力、エネルギーがかかっている。加工が終わってからも、LEDひとつあたりの大きさと比較して、反射板の大きさのほうが大きいから、個包装に使われるエネルギー、そして、個包装されたものが輸送されるとなると、かなりのエネルギーが使われるだろう。

また、反射板を作るための工場を稼働させる場合と、それらの工場が存在せず、反射板なしで同程度の明かりがとれるだけのLEDを製造するための工場を作る場合、どちらが消費電力が少ないだろうか?

スラッシュドット・ジャパンの記事「LED製品の製造から廃棄までのエネルギーコスト、白熱電球を大幅に下回ることを確認」の元となったNYTimesの記事によれば、製造には白熱球の製造から廃棄までにかかるエネルギーは、LEDと電球形蛍光灯と比較して5倍多くかかるとのこと。どの照明も、製造にかかるエネルギーは、「製造から廃棄まで」のトータルの消費エネルギーの2%以下だが、白熱球と同じ明るさをLEDと電球形蛍光灯が生み出すには、白熱球に対して20%しかエネルギーを使わないとのこと。

対する反射板制作の方は、アルミニウムの精製の過程だけ見ても、Wikipedia「アルミニウム」項目によれば、それにかかる電力消費の大きさから、多くの国内のアルミ精製事業が海外にその拠点を移したという。


ここまで読んでみて、どうだろうか?そう、少し考えただけでは、反射板があればLEDの数が少なくてすみ、結果として電力、そしてエネルギーの消費が少なくて済むように見える。だが、製造過程も含めて世界規模で考えると、本当にそうなのか怪しく思えてくるのだ。


だが、無知でアホな私には、反射板を使用した場合と使用しなかった場合で、製造、輸送、加工、使用などをひっくるめたエネルギー使用量が実際のところどうなのかは検討もつかない。ただ、「パッと見こっちのほうがエコ」に見えるものの多くが、より離れてみれば本当にそうなのかは疑わしいというところに、日頃から注意して欲しい。

この投稿では意図的に反射板とLEDの対比、反射板のエネルギー消費が多く見えるようにしている(実際のところはどうかしらないし、実際多いかもしれないのだが)。例えば、反射板の原材料かもしれないアルミニウムについては長々と書いているのに、LEDの原材料となる物質の生産にかかるエネルギーなんて調べてすらいない。正当な比較などはしていないのだ。世の中には恣意的にこのような考えの誘導が多く存在している。都合のいい情報を、都合のいいように並べ替え、都合の悪い情報は見せなければ見栄えがよく、そこから利益を上げることは珍しいことではない。

特に「エコ」「省エネ」が声高に叫ばれている今、それを利用して、使うぶんには「エコ」「省エネ」かも知れないが、元を正せば怪しいものが多く存在している。「エコバッグ」などはわかり易い例で、「エコバッグ」を新たに製造(ここが一番の無駄どころ)し、『これはレジ袋を使うよりも「エコ」だから消費者に買ってもらおう』という明らかに消費者を非エコな消費に誘導するようなやり口で販売、おかしな所ではリサイクル工場の見学でタダでもらえたりなんかもする(もちろんリサイクル工場自体はこの製品にお金をかけ購入しているのだろう)。実際には「エコ」バッグなど買わずに、すでにあるバッグなりバックパックなり風呂敷なり、使用済みのレジ袋なんかを使えばそのような余計なエネルギーを消費したモノを買う必要はなく、よりエコなのである。ここでエコバッグを買わない選択を多くの人がすれば、少なくとも「エコバッグ」という似非エコ商品は売上が伸び悩み、上手く行けばエコバッグを一掃することも可能かもしれない。そうなった時にエコバッグを作っていた工場が無駄になる、その工場を作るのに消費されたエネルギーが無駄になるのではないか、という考えもあるかもしれないが、似非エコ事業が減ることで、無駄なエネルギー消費が止まることこそエコに近づく一歩だ。

電気を消して、その代わりに「エコ」キャンドルをつけるなんてのもアホらしい。どうせキャンドルを付けてもその明かりで本を読むわけじゃなし、必要もないのにキャンドルを燃やしてCO2を増やすだけだ。電気を消して暮らす、ならエコかも知れないが、キャンドルを無駄に灯して注目を集めたいだけで、本当に環境を考えているわけではない、ただのパブリシティースタントだ。例えば、フィンランドのグリーンピースが福島原発被害者のメモリアルデモ行進とか、鳥取「環境」大学のキャンドルナイトとかなんてそれに該当するだろう。


なんて御託を並べてみたが、ホントはもっと軽いノリで書け、軽いノリで読める「エコ」テーマの記事を書きたかったんだけどな。ここまで真剣に読んで下さった(読んじゃった?)方に感謝するとともに、今後はもっと軽く読めて深く考えてもらえる記事を書くよう努めます。

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